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YIDFF 2017 インターナショナル・コンペティション
孤独な存在
沙青(シャー・チン) 監督インタビュー

「生きる意味」を考えること =「生きる」こと


Q: 沈鬱な雰囲気から始まる映画ですが、このような作品を撮るに至った出来事があったのでしょうか?

SQ: 次はどんな作品を撮ろうか探していたとき、多くの人が葬式で集まっているのを見かけました。暗い色の服を着た彼らが静かに黙々と歩いているのを見て、「生きる意味」は何かという疑問が突如頭の中を埋め尽くしました。彼らはなぜ無味乾燥な生活をつづけられるのでしょう。人生は楽しいこともありますが、苦しいことがとても多いと感じます。当初は、そういった疑問や葛藤に対する答えを本で得ようとしていました。しかし結局のところ、私は映画監督ですから、「生命」に対する考え方を、映像を使って伝えたほうがよいだろうという結論に達しました。他人を観察したのは、彼らの日常を見ることで、生きる原動力になる出来事が見つかるのではないかと考えたからです。この作品は、一度2010年に完成させた『消逝的倒影』に手をくわえたものです。そのころは、自分をさらけ出すことに恐怖心がありました。死に迫る経験をしてから、自己を表現していく勇気を得られました。そこで今回独白を字幕でくわえました。

Q: 撮影手法にこだわりはありましたか。ロングショットの多用など、監督の精神状態を反映していたように思えたのですが?

SQ: ある程度距離を保って撮ったほうが、カメラの存在を意識されることがないため、相手の動きが自然になります。離れたところから他人を観察したいという私自身の性格もあるでしょう。焚き火の周りを大勢の人々が囲んで、ぐるぐる回っているシーンで被写体に近づいて撮っているのは、私自身が、いったん死んで生まれ変わったという気持ちも表わしているかもしれません。この映画の映像素材自体はあまり多くなく、全部で30時間あるかないか程度です。多くの映像は私が直感的に撮ったもので、当時どういうことを意図して撮ったのかを言葉で語るのは難しいです。それに言語化することで、映像の本質を覆い隠してしまうのを恐れています。映像を観て何かを感じ取って、自由に考えてもらえるのが理想ですね。素材は少ないですが、編集は2年かけました。映像の切り替え方ももちろんですが、自分が仕事で録音関係に携わっていたので、音の扱いにもこだわりました。とはいえ、どういった音やシーンを、どのタイミングで挿入するかは、綿密に計算したわけではなくすべて直感で編集したんです。シーンがどういった意味を持つかというよりも、それをどう繋げていき、新しいものを創り出していくかを重要視しました。

Q: この作品を作ったきっかけである「生きる意味」とは何かという疑問に対する答えは見つかりましたか?

SQ: 映画を作っているなかで、編集が手につかなくなってしまった時期があり、「生命」に関する本などをたくさん読みました。トルストイの書籍でもそういったことが言及されていましたが、答えは明示されていませんでした。たぶん明確な答えは無いのでしょう。きっと、「生きる意味」を考えること自体が生命の一部なんです。現在は「生きる意味」、そして楽しみや苦しみの中で作られていく、人と人との関わりをテーマにしています。

(構成:吉岡結希)

インタビュアー:吉岡結希、櫻井秀則/通訳:中山大樹
写真撮影:薩佐貴博/ビデオ撮影:大川晃弘/2017-10-07