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    在日の登場する日本の劇映画傑作集。千葉泰樹、加藤泰、李學仁、井筒和幸が描く在日像とは? 諸事情により未公開に終わった『赤いテンギ』は今回が初上映。


    煉瓦女工

    The Brick Factory Girl

    日本/1940(公開:1946)/日本語、朝鮮語/モノクロ/35mm/63分

    監督:千葉泰樹
    原作:野沢富美子 脚色:八田尚之
    撮影:中井朝一 
    音楽:深井史郎 装置:小池一美
    出演:矢口陽子、三島雅夫、徳川夢声、悦ちゃん、小沢栄、赤木蘭子、椿澄枝
    製作会社:南旺映画 配給:松竹
    提供:松竹、東京国立近代美術館フィルムセンター

    1940年に野沢富美子が発表した同名小説の映画化。千葉泰樹監督は、台湾を舞台にした『義人呉鳳』(1932)や沖縄を舞台にした『白い壁画』(1942)など当映画祭ではお馴染みの作家だが、この作品では日本に住む朝鮮人を取り上げている。貧乏長屋に住む少女が出会った朝鮮の娘と屑屋を営むその家族の暖かさを描くなど作者のヒューマンな姿勢が見受けられる。プロレタリア思想のためか検閲で不許可となり上映禁止。公開されたのは戦後のことだった。



    男の顔は履歴書

    By a Man's Face Shall You Know Him

    日本/1966/日本語、韓国語/カラー/35mm/89分/英語字幕版

    監督:加藤泰 脚本:星川清司、加藤泰 
    撮影:高羽哲夫 編集:石井巌 録音:小尾幸魚 音楽:鏑木創 
    美術:梅田千代夫 照明:青木好文
    助監督:長谷部利朗、五十嵐恵司、三村晴彦、南部英夫
    出演:安藤昇、真理明美、伊丹一三、中谷一郎、内田良平、中原早苗、嵐寛寿郎
    製作:升本喜年 製作会社:松竹 
    提供:松竹、国際交流基金

    加藤泰による初の松竹映画。この後『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』(1966)、『懲役十八年』(1967)と安藤昇主演の作品が続き、戦中・戦後三部作と言われている。敗戦後の混乱した時代、マーケットの地主で医師の主人公と、その土地を狙う在日集団との対立を軸に、民族の対立を越えた人々の情愛を描く。加藤泰が「私は民族問題というほど開き直った考え方は出来ないのです。この映画はやはり、男と女です」と記述したように、この映画は恋愛映画の大傑作なのだ。



    赤いテンギ

    Red Tengi

    - 日本/1979/日本語、韓国語/カラー/35mm/118分

    監督、脚本:李學仁(イ・ハギン)
    撮影:金徳哲 編集:鈴木昌春
    録音:杉崎喬 音楽:J.A.シーザー
    美術:片桐健之 照明:山下博 助監督:霜村裕
    出演:大林丈史、馬渕晴子、東野英心、関弘子、松村達雄
    製作:瀬戸要、福田元彦、東野昌明 
    製作会社:らんる舎、緑豆社
    提供:天遊、東京国立近代美術館フィルムセンター

    1955年に起きた静岡県三島市の運送店女主人殺人事件を題材に、在日作家としては初めての劇映画『異邦人の河』を撮った李學仁が『詩雨おばさん』に続き取り組んだ作品。主犯とされた在日朝鮮人・李得賢(イ・ドッキョン)らの冤罪事件(丸正事件)として知られ、再審請求運動の最中にあったが、映画製作サイドと、被告やその身内、支援団体との間に意見の相違衝突があって公開できなかったという。



    ガキ帝国

    Empire of Kids

    日本/1981/日本語、韓国語/カラー/16mm(原版:35mm)/115分/英語字幕版

    監督:井筒和幸 原案:井筒和生 
    脚本、助監督:
    西岡琢也 撮影:牧逸郎 編集:菊池純一 
    録音:
    木村均 音楽:山本公成 照明:佐々木政弘
    出演:島田紳助、松本竜介、趙方豪、升毅、紗貴めぐみ
    企画:多賀祥介 製作:林信夫、佐々木史朗
    製作会社:プレイガイドジャーナル社、ATG
    配給:ATG 提供:東宝、国際交流基金

    自主映画、ピンク映画、ドキュメンタリー映画で注目されつつあった井筒和幸が取り組んだ初の一般映画。低予算映画にもかかわらず、当時売り出し中の漫才コンビ、紳助・竜介や趙方豪(チョウ・バンホウ)ら出演者をはじめ、関西の若いスタッフの熱い情熱が生み出したパワフルな作品。大阪のキタとミナミの不良少年グループ同士の抗争を背景に、ケンカと遊びに明け暮れる在日を含む若者の姿を初々しい演出で描く。井筒監督は最近作『パッチギ!』でも在日の若者たちをとりあげている。

     



    シンポジウム 境界からの視線

    日時:10月12日(水)18:30 会場:瑳蔵(さくら)

     これまで様々な角度から在日を描いてきた映画作家が集い、それぞれが作品づくりへの熱い思いを語る。個性の強い作家たちの激論を取りまとめる大役を山根貞男が担当。映画史を構築してきた重要な作家を人選したつもりだ。この機会に若い作家もぜひ参加して、大いに発言してもらいたい。

    • 出席者 ……… 呉徳洙朴壽南前田憲二 ほか
    • 司会 ………… 山根貞男(映画評論家)