日本に生きるということ |
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時代の証言
1 盛善吉
戯曲や放送脚本、能評も手がける盛善吉監督。数多の悲劇を乗り越えてきた朝鮮人被爆者と、原子雲に消された彼らの痛恨の思いを、世界の人々に訴える。
世界の人へ 朝鮮人被爆者の記録
To the People of the World: A Record of Korean A-bomb Victims-
日本/1981/日本語/カラー/16mm/47分
監督、製作:盛善吉
撮影:金徳哲、岸博明、君津行
編集:長尾義之、高橋弘子
録音:中里勝範、相原正之、宮崎正純
音楽:後藤英雄、小嶋知幸、アクシス、水谷忠信、石城太郎、富田通子
現地録音:小池純一 音響効果:小川勝男
ナレーター:中西妙子 助手:呉充功
製作委員会:朝鮮人被爆者の記録映画を作る会
提供:湯澤和貴(「やわからい水」)
広島の被爆者の実情を描いた前作『世界の子らへ』(1979)がライプチヒの映画祭で栄誉賞を受賞したのを契機に、盛善吉は広島県朝鮮人被爆者協議会から「私たちの記録映画を作って」と頼まれる。自分の土地を抵当に入れるなど借金から製作を開始した作品。
2 朴壽南(パク・スナム)
『李珍宇全書簡集』『罪と死と愛と』などの著作で知られる朴壽南が取り組んだ映画2作品。広島では韓国・朝鮮人被爆者の、沖縄では強制連行、従軍慰安婦などに関する歴史証言を集めた。
もうひとつのヒロシマ 아리랑(アリラン)のうた
The Other Hiroshima: Korean A-bomb Victims Tell Their Story- 日本/1987/日本語/カラー/16mm/58分
演出、構成、企画:朴壽南(パク・スナム)
撮影:大津幸四郎、星野欣一 編集:富塚良一
録音:甲藤勇 音楽:原正美
製作委員会:青山企画(李海先)、『아리랑(アリラン)のうた』製作委員会
提供:朴壽南
作家の朴壽南が初めて取り組んだ記録映画。自ら原爆スラムに住み、年老いた在日被爆一世が次々に亡くなっていくなかで、彼らの沈黙を破らせる必要を痛感、私財を投げ打ち借金を抱えながら、撮影の大津幸四郎とともに広島在住の朝鮮人・韓国人被爆者、渡日治療中の在韓被爆者の証言を集めた。在韓被爆者の渡日治療は1980年にようやく始まったが、1986年に打ち切られるという状況のもと、上映運動が盛り上がった。
아리랑(アリラン)のうた オキナワからの証言
Song of Arirang: Voices from Okinawa- 日本/1991/日本語/カラー/16mm/100分
監督、製作:朴壽南(パク・スナム)
撮影:大津幸四郎、宮内一徳
編集:富塚良一
録音:甲藤勇
音楽:原正美
製作委員会:『아리랑(アリラン)のうた』制作委員会
提供:朴壽南
朴壽南が『もうひとつのヒロシマ』に続き、沖縄戦時下における証言を中心に描いた作品。本土上陸を遅らせるための捨て石とされた沖縄には、朝鮮人男性が“軍夫”として、女性は“慰安婦”として連行された。実際に体験した在日、在韓、日本人たちの証言を集め、正しい歴史認識を提示する。映画製作は「死んでいった人たちへの鎮魂であり、その魂を私たちと共に再生させること」と言う監督の言葉どおり、鎮魂の舞「アリラン」のラストシーンが印象的。
3 前田憲二
『神々の履歴書』(1988)、『土俗の乱声』(1991)などで一貫して渡来文化を追いかけてきた前田憲二が、朝鮮人強制連行・強制労働の歴史を、日本各地、韓国、中国に取材した大長編記録映画。
百萬人の身世打鈴(シンセタリョン) 朝鮮人強制連行・強制労働の恨(ハン)
Telling the Stories of a Million Lives: Lamentation of Forced Korean Relocation and Labor-
日本/2000/日本語/カラー/16mm/225分
監督、脚本、製作:前田憲二
撮影:北村徳男
音楽:今井重幸
ナレーター:高山真樹
助監督:趙顕洙、李大
企画、製作会社、提供:映像ハヌル
朝鮮渡来文化を執拗に追い続けてきた前田憲二が「朝鮮人強制連行・強制労働」をテーマに、4年がかりで完成した長編記録映画。作品は「太平洋戦争光州遺族会」「生と死の狭間で…」「元・従軍慰安婦たち」「天皇と松代」「原爆被爆者たち」の五部構成になっている。前田の他に、映像ハヌル代表で在日二世の李義則(リ・ウイチク)、『人間よ傲るなかれ ― 映画監督亀井文夫の世界』(1991)を監督した手塚陽らがインタビューを担当している。