何があったのか、知りたい(知ってほしい)
We Want (U) to Know-
カンボジア/2011/クメール語、英語/カラー/Blu-ray/54分
監督:エラ・プリーセ、ヌ・ヴァ、トゥノル・ロ村の人々
脚本:エラ・プリーセ、ユディット・シュトラーサー、シャンティ・サトラー
撮影:イェンス・イェスター
編集:イェンス・イェスター、マックス・ケニー
録音:ボパナー映像記録センター、ジェンルカ・スターツィ
音楽:カンボジア・リビング・アート(CLA)
製作:クメール民主主義研究所(プノンペン)、グレゴール・マトゥーシェク(bildsturz.tv/ベルリン)
提供:エラ・プリーセ
カンボジアでは、1975〜79年のクメール・ルージュの支配下で、200万人もの人が亡くなったと言われる。プノンペンで旧ポル・ポト政権の虐殺を裁く特別法廷が開かれるなか、監督らはキリング・フィールド近くのトゥノル・ロ村へカメラや機材を持ち込んだ。ポル・ポト時代を生き延びた人々の記憶を村人とともに掘り起こし、若い世代へ伝えていくため、ワークショップを行う。やがて村人たちは、監督たちの思いを超えて辛い記憶を再現する映画を作っていく。
【監督のことば】2008年、私はカンボジアのクメール・ルージュ体制を生き延びた人々をケアする心理学者やソーシャル・ワーカーたちと協力して、一本の映画を製作することになった。そこで私は通常のものの見方を逆転させ、他者に代わって語るというものから、村の人々を巻き込んだ直接参加型の試みへと、このプロジェクトの形式を変えることにした。私からすれば、この分野に本当に通じているのは、ポル・ポト体制を経験し、そのなかを生き抜いた彼らの方だったからだ。共に仕事をすることになった若者、ヌ・ヴァの当初の正式な役割はカンボジア側の仲介だったが、私は彼を共同監督にして、映画の製作プロセスに初めから関わってもらうようにした。村の生き残りの人々が参加してくれるようにすることが私たち二人の仕事だった。私たちが提供する映画というメディアをどのように使うのか、どの話を語っていくのかということは、彼らが決めていった。本作は、交流と相互理解の思いがけないプロセスを経て完成した――そして、そのプロセスそのものが映像に記録されたものである。
「私たちは知りたい、それだけでなく、知ってほしいという気持ちもある」と村人たちは言う。
「私たちは映画の主人公であり、この恐ろしい物語の当事者として、ポル・ポト時代のカンボジアで本当は何が起きていたのかを再構成する必要がある。同時に、若い世代には、私たちが経験したことを知ってもらう必要もあるし、国外の人々には私たちの話が本当にあったことなのだと知っておいてほしい」
彼らが自身の悲しい過去に向き合い、再定義するために編み出した独自の方法は、カンボジア国内のみならず世界中の観客を驚かせ、その心を打ち、そして揺さぶった。この映画によって、コミュニティ・レベルにおける和解へとつながる行動が集団として活性化し、ビデオによるストーリーテリングやアートを用いたワークショップがカンボジア国内だけでなく、紛争後に似たような課題を抱えた他の地域でも広まっていくきっかけとなってほしい。
エラ・プリーセ
1974年、ローマ生まれ。語学/文学で学位を取得したのち、映像人類学的な見地からアプローチした移民研究で修士号を取得。ベルリンを拠点に、フリーランスで著作と映画製作を行っている。ここ数年は、ナポリからアルジェリアにかけて点在する難民キャンプやロマの居住地でフィールドワークを続けており、移民問題を扱う各国の研究機関からの委託のほか、映画学校やテレビ局の仕事にも携わっている。NGOとともに小学校や高校で、若年者向けの参加型ワークショップを主催。映像人類学、当事者による民族誌的記録、映画製作に関するセミナーなども行っている。
ヌ・ヴァ
1979年、ポーサット生まれ。法律学と教育学で学士号を取得したのち、プノンペンで人権関係のNGO活動に従事。近年は、クメール・ルージュ特別法廷と被害者の支援・保護のアウトリーチ活動に携わる。また、カンボジアの法制度に通じた「市民アドバイザー」の育成にも取り組んでいる。