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[パレスティナ]

この2メートルの土地で

Two Meters of This Land

- パレスティナ/2012/アラビア語、英語、フランス語/カラー、モノクロ/Blu-ray/80分

監督、脚本、編集、製作:アフマド・ナッシャ
撮影:ロシベル・ロハス
録音:ワリード・アカル、ナディーム・エルフサリー、ニコラス・サベルティディス
提供:アフマド・ナッシャ、トゥラブ・フィルム www.turabfilms.com

ある夕暮れ時。ラマラにある詩人マフムード・ダルウィーシュの墓碑の近くで、パレスティナ音楽祭の準備が進んでいる。テレビ中継を準備するクルー、出番を待つ学生たち、リハーサルをする演奏者、舞台の裏方、記者志望の学生、日本人写真家。みな、それぞれの役割を演じ、人が人と出会い、離れていく。様々な言語の会話が飛び交い、日常の物語が交差する本番までの空間が、独自の映像世界で広がる。



【監督のことば】夏はパレスティナの多くの街で、野外のポピュラー音楽祭が開催される季節だ。有名無名の音楽やダンスのグループを、ジャーナリストやテレビカメラが追う。ある夏、私は現場の様子をこの目で見ようと、いくつかのコンサート会場に、本番が始まる約3時間前に行ってみた。ジャーナリストや技師、ミュージシャンなど、それぞれの所作には、小さな物語があった。そうした物語はパレスティナのメディアでは紹介されない。

 音楽祭は年に一度しか開催されない特別なイベントだが、音楽祭に関わる人々が日常生活で直面する状況を反映しているかもしれないと感じた。それに舞台のコンセプト、見せる行為にとても興味があった。ミュージカルやダンスショーで何が見せられ、何が一般の人から隠されるのかは、映画製作にとって面白い題材になり得る。

 この映画の主人公は人間ではなくスペースだ。その空間がどのように埋まったり、閑散とするか。私にとってこれは、パレスティナでの生活の主要なテーマだと思える。ある時は人で埋まり、あるときは誰もいなくなる場所を見つめることについての映画なのだ。

 映画は、偉大なるパレスティナの詩人、マフムード・ダルウィーシュの墓碑の近くを舞台としている。映画監督としての私のビジョンは、詩人のそれに近い。すべての人に見えるわけではない行動に焦点を当て、言葉によってではなく、映像と音によって、知的というより感覚的な体験を作り出し、そのような行動に形と意味を与えようとした。


- アフマド・ナッシャ

1974年、スペインのセビリア生まれ。父親はパレスティナ人。セビリア大学で視聴覚コミュニケーションを学び、キューバのサン・アントニオ・デ・ロス・バニョス国際映画テレビ学校で映画編集を学ぶ。キューバで『El extranjero』(2000)を監督し、バルセロナのFAD賞で最優秀短編劇映画賞を受賞。『Se vende piano』(2000)、『Zoia』(2001)、中編ドキュメンタリー『Cada pez a su estanque』(2007)も監督した。編集として携わった『Dear Camilo』(2007)では、2007年のイカロ中米映画ビデオ祭で最優秀編集賞を受賞(最優秀中米ドキュメンタリー映画賞との同時受賞)。映画評論家でもあり、映画雑誌などに記事を書いている。初の長編映画である本作は、2012年のマルセイユ国際ドキュメンタリー映画祭の国際コンペティション部門でプレミア上映され、審査員特別賞を受賞。