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[フィリピン]

戦争に抱(いだ)かれて

War Is a Tender Thing

- フィリピン/2013/フィリピン語、英語/カラー/Blu-ray/51分

監督、撮影、編集、製作、提供:アッジャーニ・アルンパック

ミンダナオ島で分離独立などを求め闘争を続けてきたモロ・イスラム解放戦線とフィリピン政府の間で、和平協定が調印されるというニュースが流れるが、監督の両親は懐疑的だ。ミンダナオ島南部出身の監督は、農園主であった父方のイスラム教徒の家系、またルソン島から入植者として移住した母方のキリスト教徒の家系それぞれのルーツを辿っていく。メディアを通して報道される「紛争地帯」のイメージからは見えない複雑な家族の歴史、個人の声を拾う。



【監督のことば】「平和とは戦争と戦争の間の一時的な期間に過ぎない」。


 本作では、世界で二番目に長く続く紛争と称されるミンダナオ紛争を、住む場を追い求め、そして守るための痛ましい物語として語り直した。

 そこには不穏な空気が漂っている。私の故郷では、何十年もの間、戦争が猛威を振るい続けている。このドキュメンタリーは、ひとつの約束された土地におけるイスラム教徒とキリスト教徒の、ふたつの文化の融合に焦点を当てている。これは1930年代に国家が後押しした土地再定住計画がもたらした文化統合についての個人的な探求である。

 植民政策は現在も実施され、すでに誰かが所有している家々が、他の者の手に渡ることになっている。そして、まるでウィルスのように、さらに歪んだ政策を生み出し、主として現在の土地所有者には有利に働くが、住む場所を追いやられた者、土地を持たぬ者に対してはそうではない。2012年には別の枠組み合意が協議され、調印されたが、これとて南ミンダナオの争いを抑えこもうとする試みでしかない。

 一般庶民の生活を省みない国家の政治的方便により弄ばれた多くの人々の人生を、どのように説明したらいいのだろう? どれほど不完全であろうと、部分的であろうと、彼らの話に耳を傾けることである。そうした記憶が、説得力を持つとともに真実を伝える、戦争の物語を形づくるのである。


- アッジャーニ・アルンパック

フィリピン、ミンダナオ島出身のライター、映画監督。現在、マニラ首都圏のケソン・シティを拠点に活動。フィリピン大学の映画・視聴覚コミュニケーション学部を卒業。これまで監督した作品には、ミンダナオ島のムスリム女性を描いた長編ドキュメンタリー『Walai』(2006)、80歳を超える都市部の貧困層のリーダー、カルメン・デウニダについてのドキュメンタリー『Nanay Mameng』(2012)がある。