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[フィリピン]

エクス・プレス

Ex Press

- フィリピン/2011/フィリピン語、英語/カラー、モノクロ/Blu-ray/90分

監督、脚本、撮影、編集、録音、音楽:ジェット・ライコ
製作:ヴェロニカ・P・サンティアゴ
提供:ジェット・ライコ

土砂災害で立ち往生したフィリピン国有鉄道、ビコール・エクスプレスに乗り合わせていた監督。新列車開通の華々しいニュースを報道するはずだったテレビ取材班や、シャベル片手に黙々と復旧作業を行う労働者たちを尻目に、監督のカメラの窓は、夢物語のなかへと誘う。ある鉄道警察にまつわるミステリー、その地に伝わる反乱軍と国軍の歴史、沿線から石を投げる人々へと寓話が紡がれる。空想とも現実ともつかない物語の断片が散りばめられた映像の冒険。



【監督のことば】2010年、フィリピン国有鉄道は新型列車(日本から購入した中古列車)を導入し、メディア関係者を鉄道運行試乗に招待した。ビコール・エクスプレスと命名された列車は、マニラからナガに至る経路を16時間で走行すべく計画されていた。それは進歩の象徴というふれこみだった。

 ある時点で、この進歩は少なからぬ困難に遭遇した。どんな進歩にも軋轢はつきものなのだ。幾多の軋轢の存在によって、私は問題の所在をカメラに収め、また理解することができた。危ない鉄道線路、石を投げつける人たち、不法居住者、そして暴力の歴史を。

 かくして我々はプレスの一員としてそのイベントを取材する職務を果たした。けれども、ある町の野蛮な物語を披露してくれた男と会話を交わした後、私はジャーナリストとしてよりも、フィルムメーカーとしての性格を強めることになった。

 スローシネマの実験精神で撮られた本作は、フィリピンの政治社会体制を通して、その発展の現況を発見し、再検討しようとするものである。完成から2年の歳月を経て、この映画は前向きな発展を遂げた国、日本で上映されようとしている。


- ジェット・ライコ

1986年、マニラ生まれの映画監督、TVディレクター、撮影カメラマン。これまで短編映画、ミュージックビデオ、テレビCM等を製作。現在、アジア太平洋映画インスティテュートで撮影技術の講師を務める。2008年以降、60以上の短期プロジェクトをプロデュース(バンドVigo、デュオFando & Lisのミュージックビデオに加え、物語、実験/ビデオ・アート、ドキュメンタリー形式の小品等)。短編映画『Patlang』は、2010年のDAKILAアラブ(Alab)ショートフィルム・コンペティションで最優秀短編映画賞を受賞。長編初監督の本作は、第13回全州国際映画祭で審査員特別賞を受賞、オシアン・シネファン映画祭、ロッテルダム国際映画祭、ロンドンのオープンシティ・ドックス・フェスト等でも公式上映作品に選ばれる。2009年、ファー・イースタン大学でマス・コミュニケーション論の学位を取り、同校を優秀な成績で卒業。現在、長編第2作『Leave It for Tomorrow for Night Has Fallen』に取り組む。同作品はフーベルト・バルズ・ファンドから脚本助成を受けた。