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[ヴェトナム]

ブアさんのござ

Mrs. Bua's Carpet
Xóm mới

- ヴェトナム/2011/ヴェトナム語/カラー/HDV(SD)/35分

監督、脚本、撮影:ズーン・モン・トゥー
編集:グエン・ティ・ハーオ
録音:ファム・ホン・リエン、グエン・トゥー・ホン
製作:アンドレ・ヴァーン
提供:ズーン・モン・トゥー

ヴェトナム戦争時、同じ村のなかで解放軍側と傀儡政府軍側にいた住民が、酒を酌み交わしながら戦時中の体験を語り合う。ブアさんは、洗濯のかたわら新婚当時を振り返り、髪をときながら米軍兵士から受けた拷問の話をする。後遺症を抱えるブアさんを温かく見守る近所の人々にも、それぞれの傷跡がある。ブアさんや隣人たちが日常生活のなかで語る戦争体験は、村の記憶となって映像に刻まれる。



【監督のことば】2011年、アトリエ・ヴァランのワークショップに参加した際、出された課題が、戦後を題材にした映画を作ることだった。私は以前テレビで見た、ブアさんという、戦争の後遺症に苦しむ女性のことを思い出し、彼女の家を探しに行った。驚くべきことに、ブアさんは私の母の友人だった。彼女と母は、アメリカの傀儡政府の収容所に一緒に拘留されていたのだ。その後、母は別の収容所に移され、お互い消息がわからなくなったという。

 私はブアさんに母の姿を重ね、母にブアさんを重ねた。収容所で拷問を受けた母は、何十年もたった今でも体の痛みがぶり返す。ブアさんはさらに過酷な刑罰を受けている。彼女は重い戦争後遺症を抱え、頻繁に引き付けを起こす。発作は1〜2時間続き、そのたび、かつての拷問が彼女のなかで再現されていくのだ。幸い発作は事前に察知できるため、ブアさんは前兆を感じると家の前でござを広げる。それを見た村の人たちは、忙しくとも駆けつけ、彼女の手助けをしていたそうだ。

 映画を作り始めたとき、2年ほど前から引き付けの症状が消えていたことを知った。私は心底喜んだ。何しろブアさんが拷問の苦痛を感じずに済むのだから。ただ映画の製作には行き詰まり、私はコミュニティに主題を移すことになった。村には戦争に加わった人が大勢いて、共産側についた人も米国側についた人もいたが、彼らは同じ村のなかで助け合い、不思議と仲良く暮らしている。同時に戦争の記憶は決して色あせることなく、日常生活のなかにいつもあり、村人は日ごと、夜ごとに話して聞かせ合うのである。

 こうして私の映画『ブアさんのござ』ができた。


- ズーン・モン・トゥー

1999年、フエ科学大学文学部卒業。2000年から記者・編集者として、ダナン市のヴェトナム・テレビジョンに勤務。数多くのテレビ・ドキュメンタリーを制作し、国内のテレビ番組のフェスティバルで受賞した作品もある。2007年にはフィリピンで、テレビ・ドキュメンタリー演出の養成コースを受講し、プロジェクト「Imaging Our Mekong 2007」に参加。その後、HIVをテーマに、ヴェトナム/カンボジアの国境地帯で取材したドキュメンタリーを制作。この作品はメコン地域で上映された。現在はジャーナリストとして活動もし、ワークショップ「ヴァラン・イン・ダナン」にも参加。ヴァランのためのドキュメンタリー映画として、2010年に『The Man Hanging Banners and Slogans』、2011年には『ブアさんのござ』を製作した。現在は『My Father』という映画を製作中。