みんな聞いてるか!
Are You Listening!-
バングラデシュ/2012/ベンガル語/カラー/Blu-ray/89分
監督:カマル・アフマド・サイモン
編集:ショイコト・シェクレッショル・ラエ
音響:シュカント・モジュムダル
製作:サラ・アフリーン
提供:CAT & Docs
2009年、バングラデシュでは、南部の沿岸地帯に住む人々の多くが高潮で家を失い、シュタルカリ村の100世帯もが避難せざるを得なくなった。地球温暖化による水害は、年々ひどくなる一方にもかかわらず、政府から約束された新しい堤防は着工される気配すらない。ならば、故郷が水の底に消えてしまわぬよう自分たちで堤防を造ろうと、子どもも大人も全員が立ち上がった! 若い夫婦と息子の日常を中心に、水と隣り合わせのたくましくもしなやかな生活を描く。
【監督のことば】建築家になることをあきらめ、広告業界での安定した職を捨て、自分にとって初の長編映画の準備をしていた2009年に、大津波がバングラデシュの沿岸地帯を襲った。100万人近くが家を失い、広い空の下の古い堤防の上に取り残された。誰に責任があるのかと、世界中が気候変動について騒いでいるのを聞いた。
都市で快適な生活をしていた私は、海外での報道と、地元の実情の両方を知ることができた。新聞に載っていた泥まみれの塊と化した人たちは、私の夢のなかに出てくるようになり、裸に泥を被った数百万の人々が行進している足音が聞こえた。友人らは「バングラデシュは21世紀を生き延びられない」という冗談を飛ばすようになり、移住の道を選ぶ者も出てきた。
100年に一度の大災害の渦中にいた私は、まさにこの時代の目撃者となり、心が乱された。そして自分の長編映画のプロジェクトを延期して地元の船に乗り、その後数ヵ月かけて沿岸地帯を回ることとなった。怒りをもって出発した旅だったが、戻る頃には希望を持っていた。私は何が起ころうとも生きて、夢を見て、祝福する人々の物語を知ってもらおうと、脚本を書き始めた。
バングラデシュの首都ダッカにあるオールドダッカで生まれ育ち、保守的な社会構造と規律に縛られた子ども時代を送る。初の長編ドキュメンタリーである本作は、第55回ライプツィヒ国際記録・アニメーション映画祭でオープニング上映され、第25回アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭ではオフィシャル・セレクションとして上映、パリの第35回シネマ・デュ・レエルではグランプリを受賞。建築学を学び、広告業界で働くうちに、徐々に映画に惹かれるようになる。映画製作をより深く学ぶため、EAVEのヨーロッパ・プロデューサーズ・ワークショップ、ベルリン国際映画祭のタレントキャンパス、アジア・ドキュメンタリー・フォーラム、釜山のアジア・フィルム・アカデミー(AFA)に参加。初の長編脚本『Silence of Seashell』は、イェーテボリ国際映画祭で脚本助成金を受ける。新しいプロジェクトは、NHK、KBS(韓国)、PTS(台湾)、MediaCorp(シンガポール)が協力して開催する国際企画提案会議「アジアン・ピッチ」に選ばれている。