やまがたと映画
三都大学交流プログラム
やまがた/映像の民俗史
フィルムのなかのやまがた
幻灯の映す家族
シンポジウム:映像教育と地域文化の創造
講演とシンポジウム:映像文化創造都市を目指して
ワークショップ:プレゼンテーション ホーム・ムービー保存・修復・再活用――拡張されたアーカイブ
助成:財団法人山形県生涯学習文化財団(平成25年度YAMAGATAアートサポート事業)
映画祭を支えてきた謎の力
1989年にスタートした山形国際ドキュメンタリー映画祭が好評のうちに13回目を迎え、ますます注目されている現状を前に、そもそもなぜ山形で?と思う方々も少なくはないだろう。
冬の間、雪に閉ざされる自然環境が他の娯楽産業の障害となるなか、映画だけが娯楽の王様として生き続ける下地が、山形という街にあったのかもしれない。あるいは、小川紳介率いる小川プロダクションが三里塚から上山へ本拠地を移したことが、山形市と映画祭の決定的な出会いとなったことも事実である。しかし、いくら考えてもそれだけに還元できない不思議な力が、この映画祭を強く後押ししてきたと考えざるを得ない。その力のありようを見定めようとするのが、今回4回目となる「やまがたと映画」の企画主旨だと言えるのではないだろうか。
前回までも好評だった、発掘された過去の山形を記録した映像の上映は、「フィルムのなかのやまがた」というプログラム名で引き続き上映される。山形市の広報フィルムや県政ニュース等、行政が16ミリフィルムで製作、保存していた映像のほか、アマチュア映像作家で三山鉄道の職員でもあった清瀧章さんが撮影、所有していた作品も紹介できることとなった。1974年に廃線になってしまった三山鉄道の8ミリフィルムによる記録映像は、鉄道ファンならずとも必見の価値ある映像だ。
山形の過去を見つめる映像に対し、未来を展望するプログラムとしてこれまで上映してきた東北芸術工科大学の学生作品については、企画を大きく膨らませて、中国杭州の中国美術学院、イタリアのミラノ大学との三都大学交流プログラムへと発展させた。未来の山形映画祭を担うであろう若手作家たちの、バラエティあふれる作品群にご注目いただきたい。
「やまがた/映像の民俗史」では、この特集の第1回からコーディネーターとして関わり、近年怪奇小説作家としても活躍する黒木あるじ氏の企画で「映像に残された景色や文化はなぜ失われたのか」を探り、記録することの意味を考察する。文芸評論家の東雅夫氏をお呼びしてのシンポジウムも予定されている。
そして最後に、「映像文化創造都市を目指して」というシンポジウムが開催され、なぜ山形で?という疑問に答えるとともに、これまで培ってきた山形の映像文化をより積極的に前面に打ち出し、名実ともに真の映画の都にしていくための宣言を発しようとしている。はたして、このシンポジウムで山形映画祭を支えてきた謎の力の正体が定かになるかはわからないが、この疑問に答えようと考え続ける作業こそ、映画祭を前進させていくことに他ならないとも思う次第である。