English

天からの贈り物 小林村の悲劇

A Gift from the Sky--The Tragedy of Hsiaolin Village, Part 2
天上掉下來的禮物 ― 小林滅村事件二部

- 台湾/2013/台湾語、中国語/カラー/Blu-ray/153分

監督、録音:羅興階(ルオ・シンジエ)、王秀齢(ワン・シウリン)
撮影:羅興階
脚本、編集、製作:王秀齢
音楽:林生祥(リン・シェンシァン)
製作会社、提供:影者影像工作室

2009年8月8日の台風と大規模な土砂崩れで全村壊滅状態となり、犠牲者が多数出た台湾の小林村。生き残った村人たちは、なぜこのような事態になってしまったのかを考え続けている。ある人々は巫女を通して死者と再会を果たそうとし、またある夫婦は宿そうとしている子どもに希望を見、他の幾人かはいまだに家族を失った痛みから逃れられない。村人たちの終わりのない苦難、生活を立て直そうとする不屈の精神を丹念に記録した、心に迫る労作。YIDFF 2011上映の『父の日の贈り物』の続編。



【監督のことば】小林村で過ごした3年間、私はまるで一匹の蝿になったかのように、村の復興の過程に付き纏い、追い払われてもしつこく留まっては、人間の貪欲さをリアルに提示していった。

 この映画を撮った目的は、観客に人々が苦難のなかを生きる姿を見てもらい、そこから励みを得て欲しかったからか? それとも、人々の真の喜怒哀楽や葛藤を見せたかったからだろうか? 私は小林村の壊滅というテーマを選び、見聞きしたことをすべてカメラに収録した。誰かに支配されたり指示を受けたりすることは全くなかったし、また何の展望もないまま黙ってカメラを持っていたわけでもない。

 被災後の小林村は大人気のスポットとなり、CNNのクルーまでやって来た。復興という巨大な利権に最初に飛びついたのは地元の学者だったが、2013年3月現在に至るまで、外部関係者の財政支援のもと、多くのプロジェクトが村では展開されている。皆が小林村で「成果」を上げようとしているが、その成果はいったい誰のものなのか。村の人々は忘れられていくのではないか。生活様式が大きく変えられてしまわないか。

 あまりに利権が巨大であると、人間どうしの感情も干上がってしまう。ドキュメンタリー監督もまた、惨事を、私利私欲を満たす手段として利用するのでなく、我が身を振り返って真摯に内省すべきであろう。

羅興階(ルオ・シンジエ)


- (左から)
羅興階(ルオ・シンジエ)

1960年、台南生まれ。通称アーカイ(阿階)。ベテランのインディペンデント・ドキュメンタリー映画作家。労使紛争、環境危機等の政治社会問題をテーマに作品を撮り続けている。作品は完全に独力で製作され、台湾では労働問題の教科書としての役割を果たしてきた。自らのドキュメンタリーを通じて「政治的な正しさ」をめぐる通念に挑戦する。『労使間の滑稽な競争』(1998、YIDFF '99)は、1998年の第1回台北映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。そしてモーラコット台風による大災害から2周年を迎える直前、王秀齢との共作による『父の日の贈り物 小林村の悲劇その1』(YIDFF 2011で上映)が2011年の台北映画祭でグランプリと最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した。



王秀齢(ワン・シウリン)

台南出身のインディペンデント・ドキュメンタリー映画作家。アカデミックな訓練や組織の支援を受けずに映画製作の世界に入った。羅興階と自身の妹に誘われ、まず下働きの仕事から始める。そしてパートナーである羅興階とともに複数の映画を完成させる。扱うテーマはつねに、政治、社会、労働にまつわる問題だ。