我々のものではない世界
A World Not OursA'Lamun Laysa Lana
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パレスティナ、アラブ首長国連邦、イギリス/2012/アラビア語、英語/カラー、モノクロ/Blu-ray/93分
監督、脚本、撮影、ナレーション:マハディ・フレフェル
製作:マハディ・フレフェル、パトリック・キャンベル
編集:マイケル・アーグルンド
録音:チェ・ウー
音楽:ジョン・オプスタッド
製作補:チャーラル・キムヨンジュ
製作会社、配給:ナクバ・フィルムワークス www.nakbafilmworks.com
北欧に移住したパレスティナ難民の監督が、かつて住んだレバノン南部のパレスティナ難民キャンプに里帰りするたびに撮影した映像と、父の残したホームビデオなどを織り交ぜ、家族や友の歴史、難民キャンプの変貌を、素直な語り口ですくい上げる。パレスティナの置かれている悲劇的な状況が、当事者でもなく、完全な第三者でもない視点から紡がれていく。タイトルは1972年に暗殺されたパレスティナ人作家、ガッサン・カナファーニーの小説名からとられている。
【監督のことば】私にとってこの映画を撮ることは、記憶を創造し、そして保存するうえでの意識的な試みだった。パレスティナ人、特に故郷を追われたパレスティナ人は、ひとつの民族としてのアイデンティティと集合的記憶が、つねに攻撃に晒されている。そのため、ただ記録を残すという行為でさえ、我々の存在を消さないための戦いの一部となる。
我々にとって、忘れることはすなわち存在するのをやめることだ。記憶は、たとえ日常生活のささいな記憶であっても、我々が存在する唯一の証拠である。
記憶する、また記録するという義務を、私は祖父から、そしてとりわけ父から受け継いだと感じている。父はまるで取り憑かれたように、家族の日常のすべての瞬間を映像に残していた。父の情熱が私に感染し、そして私は今ここで、父の残した映像をもとに、パレスティナ人として存在すること、それ自体を描き出す。単に紛争と苦しみについての記録であるのではなく、より人間的な物語だ。
パレスティナにルーツを持つデンマーク人の映画作家。ドバイで生まれ、レバノンのアイン・エル・ヘルワ難民キャンプで育ち、その後デンマークのエルシノア(ヘルシンゲル)郊外に移住。ビデオマニアだった父親の影響で幼い頃から映画作りを始める。イギリスの国立映画テレビ学校(NFTS)で学び、映画監督のウダヤン・プラサッド、イアン・セラー、スティーヴン・フリアーズに師事。1年生のときに監督した『Arafat & I』は多くの国際映画祭で上映され、ルーマニア、イタリア、チェコで賞を獲得。2010年にはアイルランド人プロデューサーのパトリック・キャンベルと共同で、ナクバ・フィルムワークスをロンドンで設立。自伝的長編映画『我々のものではない世界』はここからリリースされた。本作の初上映は2012年のトロント国際映画祭で、批評家から高い評価を受ける。現在は各地の映画祭で上映され、ブリュッセル、クラクフ、レイキャビク、アブダビで受賞。2013年のベルリン国際映画祭では平和映画賞を獲得。現在はパリにあるシネフォンダシヨンのレジデンス(カンヌ映画祭が提供する若手映画作家への支援プログラム)で次作を準備中。