サンティアゴの扉
The Other DayEl otro día
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チリ/2012/スペイン語/カラー/Blu-ray/122分
監督、脚本、撮影、録音、ナレーション、製作:イグナシオ・アグエロ
編集:ソフィー・フランサ
共同製作:クリスチャン・アスペ、ダニエラ・サラザール
製作補:アマルリック・ドゥ・ポンシャラ
撮影助手:アルナルド・ロドリゲス、ガブリエル・ディアス、クラウディア・セッラーノ
製作会社、提供:イグナシオ・アグエロ&アソシエイツ
チリ、サンティアゴのとある家。陰影にあふれた美しい映像を通して、観る者はある家族の記憶のなかへ深く導かれていく。だが、たびたび訪問客が玄関の呼び鈴を鳴らし、遮られる。家の主である映像作家は、訪問客たちに興味をもち、彼らの日常へと入り込んでいく。慣れ親しんだ家々、路地の姿、そこで生き、働く人々との対話から、家族の歴史とチリの現代史が詩情豊かに交錯する。
【監督のことば】映画を撮っている間、私はその作品の主題が何なのか、疑問に答えるためではなく、むしろその意味を探し続けるために、たえず自問する必要を感じている。私にとって望ましい映画企画とは、ストーリーを追う隷属状態から解放してくれるものだ。そういった次第で、私は何かを表現し、語るための映像を追求するというよりも、映像のなかに、映像それ自身が示す道筋を探し求めている。
本作では、私は現在のなかに休止し、時間と空間のバイブレーションに注意を傾けようとしている。つまり、陽の光を目で追い、聞き耳を立て、私の注意を引きつけるものの方へ意識を向けるのだ。注意の対象は、カメラを取り巻く空間に、そして撮影している人物の頭のなかにある。目は前方と後方の双方を見る。前方を見ることで身体を動かせる空間を見出し、(目の裏の)後方を見ることで身体の内側、すなわち頭脳を見出す。そこで生み出される思考、想像、記憶、そして目の前にある世界との間の対話――現実を構成するもの、つまりイメージの混合物――もまた、目は見ている。さらに、この目は瞼が開いているときも、閉じているときもともに見ている。
こうしたすべてが遮られるのは、扉をノックする誰か、映画作家ではなく、あなたの持っている何かを必要とする人が、予期せず偶然現れるときだ。それが空間的な関係性の変わる契機となる。心の内なる領域が我が家の内部となり、外部世界はサンティアゴの街である。そして、興味の対象も他者となる。彼らは、私自身が彼らの何かを、会話を必要とする人々なのだ。さて、この映画の主題は何なのだろう?
1952年、チリ・サンティアゴ生まれ。数本のテレフィルムを撮ったほか、1988年の国民投票時にTVスポット『ピノチェトにNOを』を共同監督。ドキュメンタリー映画監督協会の代表を務める。ラウル・ルイス監督の後年の作品で主役や準主役を演じる俳優でもある。また、チリ大学の修士課程でドキュメンタリー映画製作を指導している。YIDFFではこれまで、『100人の子供たちが列車を待っている』(1988)、『氷の夢』(1993)を上映。その他の作品に、『Not to Forget』(1982)、『The Way I Feel Like It』(1985)、『Under Construction』(2000)、『My Grandmother's Mother Told My Grandmother』(2004)、『Agustin's Newspaper』(2008)など。