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リヴィジョン/検証

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- ドイツ/2012/ドイツ語、ルーマニア語/カラー/Blu-ray/106分

監督:フィリップ・シェフナー
脚本:メルレ・クレーガ、フィリップ・シェフナー
撮影:ベルント・マイネルス
録音:パスカル・カピトラン、フォルカー・ツァイガマン
音響:フォルカー・ツァイガマン、シモン・バスティアン
音声:ピエール・ブランド 
進行:マルツィ・K・ヨスト
共同製作:マルツィ・K・ヨスト、マイケ・マルテンス、ぺーター・ツォルン 
製作:メルレ・クレーガ
製作会社、配給:ポン・クレーガ・ウント・シェフナー www.pong-berlin.de

1992年、ドイツとポーランド国境のトウモロコシ畑で、ルーマニアからやってきたふたりのロマ人の不法移民の死体が発見される。2012年、監督のフィリップ・シェフナーはドイツ当局から「ハンターによる誤射」で片づけられたこの事件について、関係者の証言と独自の調査結果、風景や資料をパズルのように組み合わせ、「映画的検証」を施していく。スリリングな試みのなかから、この地に根ざした暴力と差別の歴史が浮かび上がり、事件の意外な側面が見えてくる。



【監督のことば】この映画は、ひとつの物語の終わりから始まる。NGO「ヨーロッパ要塞」が発行した統計資料によれば、1988年から2009年8月までの間、少なくとも14,687人がヨーロッパの国境沿いで命を落としたことがメディアで報じられている。彼らの死は、一編のニュースとしてヨーロッパの歴史の一部となり、同時に公の歴史からその声を奪われている。彼らはいっこうに進展しない治安論議の無言の証人となり、黙ってその死を受け入れているのだ。

 『リヴィジョン/検証』は、そうした一編のニュースの、あり得た結末の可能性を辿っていく試みである。また、主要な登場人物たちを、多様な物語を動かす主体として捉える映画の可能性を追求しようとする。

 本作は、語りのなかの伝記的、政治的な観点を再構成している。それは取りも直さず、私自身の映画話法における要件や慣例を、より大きな広がりを持つ政治的コンテクストの一部として問題化する。

 形式のレベルでは「証言/証人」という用語の分析が重要になる。司法における証人は、「認識した事実を伝える」者と見なされる。単なる認識だけでは十分でなく、証人となる人物には相手、つまりその証言に対して証人の役割を果たす聞き手が必要だ。そのような話す側と聞く側の複雑な関係をとらえることが、本作におけるきわめて重要な要素である。

 主要な登場人物たちが自分自身の語りに耳を傾けるとき、彼らは自らの証言に対する証人となる。そのような仕方で、個々の登場人物は、話される事柄についての「検証(リヴィジョン)」を体験する観客とつながりを持つ。

 この「聞くことをフィルムに刻む」作品は、カメラの前の人物に、その部屋のなかの権力関係を制御し、変える手段を与えている。カメラが回っているのを忘れたときに表れるうわべの本当らしさ。そのようなドキュメンタリー的瞬間は、まさに映画撮影という行為において打ち砕かれる。


- フィリップ・シェフナー

1966年5月28日、ドイツ・ザールラント州ホンブルク生まれ。1986年からベルリンを拠点にドキュメンタリー映画、ビデオ、サウンド・アート等の分野で活動。メルレ・クレーガとともに製作プラットフォーム「pong」を運営している。映像作品に、『a/c』(1992−2000)、『India in Mind』(2003)、『The Halfmoon Files』(2007)、『Day of the Sparrow』(2010)などがある。他にビデオ集団「dogfilm」(ティナ・エラーカンプ、イェルク・ハイトマン、エド・ファン・メーゲン、メルレ・クレーガ、シェフナーが参加)の一員として、数本の短編、長編作品に携わる。