審査員
ジャン=ピエール・リモザン
●審査員のことば
山形国際ドキュメンタリー映画祭に参加できることをとても嬉しく思います。友人たちがとても素晴らしい映画祭だと熱く語って聞かせるので、ぜひともこの映画祭に参加し、観客との出会いを体験しなければと思っていました。
ドキュメンタリーは、その誕生から今日までそうであったように――そして私にとってはますます――映画における素晴らしい概念の一部です。おそらくそれは「現実なるもの」はふたつとないからでしょう。
1983年にアラン・ベルガラと共同監督した『逃げ口上』がカンヌ映画祭批評家週間で上映。1980年代後半に『夜の天使』(1986)とジュリー・デルピー主演の『天使の接吻』(1988)を発表後、ドキュメンタリーに関心を移す。アッバス・キアロスタミやアラン・カヴァリエのポートレート・ドキュメンタリーを撮る。この頃から日本文化への関心を深め、武田真治と吉川ひなの主演の『TOKYO EYES』(1998)、『北野武 神出鬼没』(1999、YIDFF 2007で上映)などの映画を製作。近年は『NOVO/ノボ』(2002)、 『カルメン』(2005)、『YOUNG YAKUZA』(2007)がそれぞれ、ロカルノ、ヴェネチア、カンヌ映画祭で初上映されている。
YOUNG YAKUZA
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フランス/2007/日本語/カラ―/35mm/99分
監督、脚本:ジャン=ピエール・リモザン
撮影:ジュリアン・イルシュ
音楽:RGM
編集:ティナ・バズ
録音:菊池信之
音響:フランソワ・ミュジー
製作会社:セルロイド・ドリームズ
提供:タマサ・ディストリビューション
ヤクザの世界に入門する20歳のナオキ。礼儀作法から大掃除、年始の挨拶といった“一般研修”、色鮮やかな刺青など極道文化のイニシエーションを受ける。一方で組長は、暴力団排除の空気色濃い現代の東京で、組織の在り方について静かにその思いを語る。時代のなかで移ろいゆくもの、変わらぬもの――その狭間で仁義を見つめ続ける孤独なリーダー像を『TOKYO EYES』のリモザン監督が描く。ナオキと同世代のラップ・ミュージシャン、RGMが各シーンをみずみずしいリズムで弾ませ、サスペンスに満ちた映像(撮影は『レディ・チャタレー』やゴダール『愛の世紀』のジュリアン・イルシュ)が、出演者たちによる演技とリアルのせめぎ合いを魅力的に描き出す。