インターナショナル・ コンペティション |
---|
審査員 |
星空の下で
Position among the StarsStand van de Sterren
-
オランダ/2010/インドネシア語/カラー/Blu-ray(HD)/111分
監督:レナード・レーテル・ヘルムリッヒ
撮影:イスマイル・ファーミ・ルービッシュ、 レナード・レーテル・ヘルムリッヒ
編集:ヤスペル・ナーイケンズ
録音:ランコ・パウコビッチ
音楽:ダナン・ファトゥラマン、ファーミ・アル・アタス
製作:ヘティ・ナーイケンズ=レーテル・ヘルムリッヒ
製作会社:スカラビー・フィルムズ
配給:フィルム・トランジット www.filmstransit.com
インドネシアの家族を12年間追い続けた3部作の完結編。両親を亡くし叔父一家と暮らす孫娘を訪ねて田舎から出てきた祖母を中心に、定職がなく闘魚に興ずる叔父とそれを嘆く妻との夫婦喧嘩、反抗期を迎えた孫娘の大学進学問題などがテンポよく映し出される。宗教間の衝突や貧富の格差、世代間の意識のずれを巧みに折り込みながら、家族を想う庶民の日常を、疾走するカメラワークでドラマチックかつユーモラスに捉えた。
【監督のことば】本作は、シネマ・ヴェリテやダイレクト・シネマの伝統に則った観察ドキュメンタリー映画である。この映画を含む3部作の中心となる人々ととても親しかったため、どんなドラマチックな状況においても、その展開を予測することができた。撮影中も、内側から家族を観察しながら、メインテーマに関わる重要な部分に焦点を当てた。3部作の他の作品同様、300時間を越えるフッテージを編集する中から、物語(ストーリー)は生まれた。
私はメインテーマである急激に変化するインドネシア社会を撮った部分から、最終的に最良のシーンを選び、論理的でありつつも詩的なシークエンスに編集した。詩は現実のように多層的だからである。映画もただこちらの一方的な解釈を押しつけるものではない。現実の出来事は映画で描かれているよりも遥かに長かったので、そのエッセンスを映画監督の個人的主観で抽出したまでである。
私は本作を前の2作品と同じ手法で撮影した。自ら考案した“シングル・ショット・シネマ”である。具体的に言えば、何かを撮影する際、カメラを大胆に動かしながら、すべてを1回の撮影で収めるのだ。私は目の前で起こっているドラマが最も良く映るポジションにカメラを向ける。中心となる人々を至近距離で追うため、何か事が起こっても、私はいつもその中心にいて、状況を内側の視点で撮ることができる。この手法を取ったのは、観察者は自らが観察しているものの一部であるとの自覚からである。
本作は、実際にカメラの目の前で起こった家族の日常生活のシーンを編集して作られた。そしてこの映画の語りを生み出したのは、常に真実を追い求め、発見するこの撮影方法である。
レナード・レーテル・ヘルムリッヒ 1959年、オランダのティルブルグ生まれ。彼が生まれる前に、家族でインドネシアのバンドンからオランダへ移住した。オランダ映画・テレビアカデミーで長編映画の監督、脚本、編集を学び、1986年に卒業。『The Phoenix Mystery 』(1990)で長編デビュー。初のドキュメンタリー作品、『Moving Objects』(1991)は国際映画祭で数々の賞を獲得。長編ドキュメンタリー映画『The Eye of the Day』(2001)、『Shape of the Moon』(2004)及び本作のインドネシア3部作は、インドネシアに民主主義が生まれた後、貧富の格差や世代間の意識のずれが広がり、日常生活にイスラム勢力が台頭してくる現実を、シャムサディン家が生き抜いていく様を通して追っている。YIDFF 2009では『約束の楽園』(2006)を上映。本作はアムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭(2010)の最優秀長編ドキュメンタリー、最優秀オランダドキュメンタリーを始めとする数々の賞を受賞。2011年9月より、アブダビにあるニューヨーク大学の映画学科教授。 |