インターナショナル・ コンペティション |
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遊牧民の家
Nomad's HomeBeit Sha'ar
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エジプト、ドイツ、アラブ首長国連邦、クウェート/2010/ アラビア語、英語/カラー/Blu-ray(HD)/61分
監督、ナレーション:イマン・カメル
脚本:イマン・カメル、クラウス・フロイント
撮影:ウテ・フロイント
編集:クラウディア・ベーギッチュ
録音:フリーダー・ブッツマン
音楽:フリーダー・ブッツマン、キヴァ・シモヴァ(歌)
製作:タラル・アル=ムハンナ
製作会社:Nomad's Home製作プロダクション www.nomadshome.net
配給:リンクド・プロダクション www.talmuhanna.com
シナイ半島の荒涼とした砂漠で女性起業家として生きるセレマと出会う辺境への旅。モーセ山近くの水の枯渇した村で、女性で最初に学校に通った彼女は、夫に支えられながら因習に立ち向かい、ベドウィン女性たちに経済力と教育をもたらそうと試みている。監督のパーソナルな視点から語られる女性たちの営みは、エジプトで生まれ育ち、住いを転々とし、現在はドイツに住まう監督自身の“遊牧”民としての人生とポエティックに重なり響き合う。
【監督のことば】“そして私は砂の上に座り、編み物を始めた。砂粒と太陽の熱が、網目の間に入り込んでくる。それはまるで、ウールだけではなく、シナイ半島のすべてを材料にしてセーターを編んでいる感覚だった。私はスーフィー・ウールを身にまとう。シナイ半島の砂漠のすべてが、私の家の中にある。” (イマン・カメル)
本作は、シナイ半島に暮らすベドウィン女性たちへのオマージュだ。エジプト人女性である私がベドウィンと初めて知り合い、彼らの歓待ぶりに感激したのは、今から25年ほど前のことになる。彼らは私を受け入れ、彼らの人生に積極的に参加させてくれた。なかでも私がもっとも親しくなったのは、セレマ・ガバリという女性だった。彼女との関係が、この映画の礎になっている。
ガバリという名字からもわかるように、セレマ・ガバリはエジプト領シナイ半島にあるガバル山(シナイ山)地方の出身だ。彼女はアル・ガバリア族の女性では初めて学校を卒業し、仕事を持った。卒業後にはじめた手工芸品の事業で、部族のほとんどの女性に仕事を与えてきた。セレマはこの功績だけでも、シナイ半島に暮らすベドウィン女性の権利のために立ち上がったパイオニアと呼ばれるに値するだろう。彼女も少女時代からずっと戦い続けてきた権利だ。
私はベドウィンではない。カイロで生まれた都会の人間で、芸術家一家に育った映画作家だ。因習を嫌い、新しい地平を求めて若い頃にカイロを出た。
それでもこの映画を通じて、セレマとの間に多くの共通点があることに気づかされた。私たちは、ひとつの情熱によって結ばれている。それは、現代社会の中で遊牧民になること、未知の何かを追い求めることだ。セレマも私も、新しい発見をし、自分を豊かにしたいと切望している。
イマン・カメル カイロ生まれ。ベルリンで美術、ダンス、映画を総合的に学ぶ。いつも旅しており、特に南アフリカ諸国と中国を回った。短編作品は『Noara』(1995)、『Khadega』(1997)、『Nachiket』(2004)、『The Clouds Are There』(2006)、ユーロメッド短編映画賞を受賞しウェブサイトでも公開された『Hologram』(2002)など。若者や移民と創造的な活動を共同で行うことを目的に、ベルリンでInitiative Film Aktiv In Schoolを設立。 本作が初の長編ドキュメンタリーになる。共同プロデューサーにクウェート人のタラル・アル=ムハンナを迎え、アラブ首長国連邦のEnjaazが提供するプログラムの援助を受けた。2011年、本作はワガドゥグ全アフリカ映画祭(FESPACO)、カイロ・ドキュメンタリー映画祭で上映され、第11回カイロ・インディペンデント映画祭では最優秀監督賞、最優秀撮影賞を受賞。 |