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  • 審査員
    アトム・エゴヤン


    -●審査員のことば

     長編作品を撮り始めた頃から私はずっと、人生を記録する登場人物に魅了されてきた。記録の意図は、何気ない録音と見えるものから、歴史をゆがめようとする悪意に至るまでさまざまだが、ドキュメンタリーの形式を取りこみ、その形式を検証するような感覚が、私の映画の多くにあるのは確かだ。私が映画を撮り始めたのは30年前のことで、映像が苦もなく民主的に制作され、誰かと交換されることを、ホームビデオがようやく可能にしようとしていた時期だった。今ではそのテクノロジーもすっかり普及し、人生のあらゆる瞬間を記録して、それを広くアクセスできる形でグローバル・コミュニティと共有できることが、当然のことになった。

     現在のこうした枠組み、および、その枠組みがわれわれをどこに導こうとしているのかを、理解することがますます重要となっている。編集権のあり方とは何だろうか。誰もが何もかもを記録している世界において、どんな境界がいまだ探索されず残されているのだろうか。ドキュメンタリーという形式の未来をめぐっては、非常に多くの問いがある。そして、今回の山形国際ドキュメンタリー映画祭が、あらゆる種類の議論を喚起するだろうことを私は確信している。つまるところ私は、ドキュメンタリーとフィクションについての古典的定義にはあまり関心がない。現実の認識方法に挑みかかっていく映画の力、それこそが私の惹かれてやまないものなのだ。

     この重要な時に、世界で最も栄誉あるドキュメンタリー映画祭の審査に参加できて、とても興奮している。私は20年以上にわたって何度も日本を訪れてきたが、この素晴らしい国を再び訪問できて光栄だ。


    アトム・エゴヤン

    これまでに発表した14本の長編映画と関連プロジェクトで、カンヌ映画祭でのグランプリをはじめ、アカデミー賞ノミネート2回、ジニー賞等、数多くの賞を受賞。2010年には、マドリッドのフィルモテカ・エスパニョーラで全作品上映が行なわれた。それ以前にも、パリのポンピドゥー・センターやニューヨークの映像博物館で、同様の催しが行なわれている。

    カンヌ映画祭、ベルリン映画祭、ヴェネツィア映画祭などで審査員長を務めている。

    アート・プロジェクトも、ヴェネツィア・ビエンナーレやロンドンのArtangelなど、世界中で公開されている。インスタレーション作品「Steenbeckett」は最近Artangelの所蔵作品に加わり、テート・ギャラリーと共同でのイギリス国内巡回展で紹介される予定である。

    ワーグナーの『ヴァルキューレ』の演出では、ドーラ賞優秀オペラ部門賞を受賞。エゴヤンが脚色し、ダブリンのゲイト・シアターで上演されたサミュエル・ベケットの『ねえジョウ』は、ロンドンのイースト・エンドとニューヨークのリンカーン・センター・フェスティバルでも上演された。2012年初頭には、カナディアン・ステージ・カンパニーによる、マーティン・クリンプ作『Cruel and Tender』の北米初上演を演出予定。主演はアルシネ・カンジャン。カナディアン・オペラ・カンパニーとヒューストン・グランド・オペラで上演され、批評家から賞賛された、リヒャルト・シュトラウス作『サロメ』の再演も近く控えている。


    城壁

    Citadel
    Citadelle

    - カナダ/2004-6/英語、フランス語、アラビア語/カラー/Blu-ray(SD)/93分

    監督、撮影:アトム・エゴヤン
    製作、提供:Ego Film Arts

    監督の妻で女優のアルシネ・カンジャンが、生まれ育ったベイルートに28年ぶりに里帰りする旅。家族旅行の記録を小型カメラで撮るエゴヤンは、10歳になる息子に向けたビデオメッセージという形を借り、自らボイスオーバーで語り続ける。レバノンの歴史と文化を縦横無尽に論じつつ、カメラを持った自分と被写体である妻との「見る/見られる」共依存関係について、そして映像の秘め持つ巧妙な罠についても……。