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    - パレスティナ、イスラエル/2006/アラビア語、ヘブライ語、英語/カラー/ビデオ/58分

    監督、脚本、ナレーター:ムハンマド・バクリ
    撮影:ファイサル・ハサーイリー、シャーイ・ペレグ、シューキー・デケル
    編集:ガビ・シホール 録音:ジェラルド・アルシュ
    音楽:アミール・シャハサル、ハビーブ・シャハーデ
    製作:アヴィ・クラインベルガー、ムハンマド・バクリ
    製作会社:ネス・コミュニケーション&製作会社 配給:ムハンマド・バクリ

    イスラエル在住パレスティナ人俳優である監督は、彼の創作に影響を与え親交の深かった故エミール・ハビービー(パレスティナ人作家・政治家)の墓の前で、自らに生じた出来事を語りだす。監督のふたりの甥がテロ事件への関与で訴追され、自作ドキュメンタリー映画『ジェニン、ジェニン』はイスラエルでの上映禁止の憂き目に会う苦闘が続いていた。それでも監督はハビービーの言葉をかみしめながら、イスラエル・パレスティナがそれぞれの愚かさに気づき互いに向きあうことを訴える。



    【監督のことば】なぜこの映画を作ったのか?

     私は1948年以後にイスラエルに生まれたパレスティナ人だ。イスラエルが建国され、イスラエル周辺のアラブ世界に多くのパレスティナ難民キャンプを築いた1948年の戦争で、大多数のパレスティナ人が国を去り、私は少数派となった。

     私は30年以上もの間、パレスティナとイスラエルの映画と舞台で俳優として活動している。

     双方の人々の態度を変え、人々の間に愛と平和を築こう、少なくとも妥当な解決策を見いだそうとする希望を体でもって表現してきた。30年以上、イスラエル人もパレスティナ人も、私を共存の象徴と見なしてきた。それが突然、2002年4月のイスラエル軍によるジェニン難民キャンプ侵攻に対するパレスティナ人の心情を扱った映画『ジェニン、ジェニン』を作ると、その映画が上映禁止になり、イスラエルのメディアから攻撃された。彼らは私を、テロを支援し、テロに支援される者と呼び、プロパガンダによって私の評判を傷つけた。(近ごろ、私は5人のイスラエル兵から名誉毀損で訴えられ、270万シェケルの慰謝料を請求されたのだ! 裁判はまだ始まったばかりだ!)。しかも私は、一般のイスラエル人からビン・ラディンの同類だと見られるようになってしまった!

     そのため、私は自分を弁護せざるをえなくなった。この映画を作ることで自分の夢を守り、イスラエルの政策とメディアの真の姿を白日の下にさらす必要があった。この映画で私は、自分の物語、自分の身に起こったことを、わが師エミール・ハビービーに語りかける。彼は著名なパレスティナ人作家で、『悲楽観屋サイードの失踪にまつわる奇妙な出来事』という小説は、私が昨年(2006)東京と京都で行ったひとり芝居の題材になっている。

     エミール・ハビービーは10年前に亡くなった。彼は私に、変化と平和のためにたったひとりでも戦おうという希望を残してくれた。


    - ムハンマド・バクリ

    イスラエル北部ガリラヤのビエネ村生まれ。1973年から76年まで、テルアヴィヴ大学で演劇とアラブ文学を学ぶ。1976年からイスラエルとパレスチナ西岸の劇場で数多くの舞台に立ち、演出も行う。同時期に映画俳優としてパレスティナ、イスラエル映画両方に出演。俳優として出演した主な映画として、『Hanna K.』(1983、コンスタンチン・コスタ=ガヴラス監督)、『壁の向こう側』(1984、ウリ・バラバシュ監督)、『エステル』(1986、アモス・ギタイ監督)、『カップ・ファイナル』(1991、エラン・リクルス監督)、『三つの宝石の物語』(1994-95、ミシェル・クレフィ監督)、『ハイファ』(1996、ラシード・マシュハラーウィー監督)、『The Olive Harvest』(2003、ハンナー・エリヤース監督)、『La Masseria delle allodole』(2007、ヴィットリオ&パオロ・タビアーニ監督)など。エミール・ハビービーの著作をもとにしたひとり芝居『悲観楽観悲運のサイード』の公演で2006年に来日。映画監督作品としては『1948』(1998)、『ジェニン、ジェニン』(2002)がある。