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アジア千波万波 [マレーシア]

ビッグ・ドリアン

The Big Durian

- マレーシア/2003/マレー語、英語、広東語、福建語/カラー、モノクロ/ビデオ/75分

監督、脚本、ナレーター:アミール・ムハマド
撮影:ウー・ミンジン 編集:テレンス・ラジ 
録音:メイ・チャン 音楽:ハーデシュ・シン 
製作:ジェームス・リー
製作会社、提供:ドッグハウス73・ピクチャー
Doghouse 73 Pictures
17, Jalan 22/51 Taman Lin Seng Petaling Jaya, 46300 MALAYSIA
Phone: 60-3-7876-9578 E-mail: doghouse73@yahoo.com
URL: thebigdurian.tripod.com

監督が15歳のとき、首都クアラルンプールのチャイナタウンで、ひとりのマレー系兵士がライフルを乱射する事件が起きた。人々は食料を買いだめに走り、高まっていたマレー系と華僑系の政治対立が爆発するのではないかと市民は緊張した。今、あの日の思い出を語る老若男女から、何らかの事実は解明するのか? プロの役者も出演する、フェイク/真実ない交ぜの証言には、マレーシアの政治状況だけでなく、当時の流行歌手、王室のゴシップ、観光局の宣伝など蛇足ネタも多いが、皮肉なユーモアがドリアンのイボイボのように刺々しく快感。



【監督のことば】1987年10月は、国の政治が自分の日常生活に初めて影響を与えた時だと記憶している。アダム下士官の乱射事件の翌日、街へ繰り出すのは危険だから、学校へ行くなと言われた。それまで政治なんてテレビや新聞の中のことだったのに、それが家庭に持ち込まれたのだ。テレビで政治家たちを見ていると、中には“演技”をしている人がいることに初めて気づいてしまい、それはとても“オモシロイ”体験だった。

 2003年のはじめ、アダム下士官の乱射事件の記憶を語ってほしいという告知を新聞に掲載したところ、100人以上が集まった。中高年の人のほとんどは事件を記憶していたが、若い人たちの多くは覚えていなくても映画に出たいと売りこんできたのだ!

 私は話の数々を、重要なものから不遜なものまでまとめていった。話のいくつかは再現してもらい、他の話は体験者自身に語ってもらう方法をとった。演技、非演技、そしてリハーサルが生みだす自然体のコンビネーションが、非常に“オモシロイ”質感を生み出した。それは1987年10月当時の私の思いを彷彿させた。いったい誰が真実を語り、そして誰が語っているふりをしているのか?

 マレーシアでは人種、宗教、政治、性などは“やっかいな問題”であり、それらについて話してはいけない雰囲気がある。裏を返せばもちろん、私たちはそういうことばかり話しているのだが。タイトルの『ビッグ・ドリアン』という果物の王様のように、結末は……とげだらけで臭い? 外側が固くても、中はクリーミー? 季節限定? 緑と黄色? それはあなたの解釈次第。

 言語や人種、論争と安っぽいジョークがマレーシアそのものに混じりあったこの作品を、ドキュメンタリーのもつ客観主義的前提を茶化すような“ドキュメンタリー”、つまり跳びまわったり、色々なことを結びつけたり、何かを伝えるものにしたかった。この映画の観客にはマレーシアの若者を想定したが、彼らは世界各地の若者同様、映画に娯楽を期待、いや要求する。楽しみながらマレーシアという国のしくみに、もう少し興味を持ってもらえれば、なおのこと素晴らしい。


- アミール・ムハマド

1972年12月5日生まれ。ウォルト・ディズニーと同じ誕生日であることから、世界に喜びをもたらすことが自分の宿命だと幼少の頃から悟る。イギリスで法律を勉強するも、実践せず。マレーシアの活字メディアに、14歳の時から書いている。他、テレビや舞台でも仕事をする。映画デビュー作『Lips to Lips』(2000)は、マレーシアで初めてデジタル撮影された劇映画。2002年、ノンフィクション短編を6作品製作し、うち2作品はシンガポール国際映画祭にて受賞。『ビッグ・ドリアン』は長編第2作目。日本財団アジア・フェローシップを受けて、2003年後半は日本を拠点に活動。すでに覚えた日本語のひとつは「オモシロイ」。


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