YIDFF: 刊行物: YIDFF 2003 公式カタログ

アジア千波万波 [インド]

迷路

The Maze of Lanes
Mauj Masti--The Maze of Lanes

インド/2002/ヒンディー語/カラー/ビデオ/6分

監督、脚本、撮影：カルパナ・スブラマニアン
編集：カルパナ・スブラマニアン、クルディープ・シン・ラーワト
録音：アシーシュ・セーングプタ、メイジャー・サンジャイ
音楽：アシーシュ・セーングプタ
ナレーター：プールナ・チャンド
製作：ランジート・マックニー
製作会社、提供：ザ・クロッシング・プロジェクト
The Crossing Project
c/o Kalpana Subramanian
47 Dakshinapuram, Jawaharlal Nehru UniversityNew Delhi 110067 INDIA
Phone: 91-11-261-80320 E-mail: kelpana@rediffmail.com

聖地バナーラス（ベナレス）の裏通りに迷い込んだ。狭く入り組んだ迷路のような路地を行く困惑と楽しみ。あっちこっちと“親切に”教えてくれる地元の人たち。色鮮やかな映像と軽快なタブラのリズムに魅せられる、夢のような短編作品。

【監督のことば】マルチメディア展示プロジェクト、ザ・クロッシングでの映画製作の仕事が、私とバナーラスを出会わせた。このプロジェクトで何度かバナーラスを訪れるうちに、結局数カ月も滞在してしまった。バナーラスで過ごした時間は、ちょうどウブな旅行者の多くがそうなるように、私をとりこにした。

　バナーラスをひとことで言うのは難しい。この町は私の想像をはるかに越えて、時間、記憶、神話、知識、経験といったものが深くしみこんでいる。バナーラスに関して、撮ってみたいものは山ほどある。路地はそのうちのひとつに過ぎないが、路地は私にバナーラスについて語りかけてくれる。というのも、路地はこの町を体験するために物理的な意味だけでなく、比喩的に言っても必要不可欠なものだからだ。

　面白いことに、迷路や迷宮は常に、内面的、あるいは精神的な探求と結びつけられてきた。私の映画で明示してはいないが、少し視点をずらして、迷路がいかにバナーラスを象徴しているか、ということは考察にあたいする。イタロ・カルヴィノはこう言っている。「町の七不思議や七十不思議が楽しいのではなく、疑問に町が与えてくれる回答が楽しいのだ」。私にとってバナーラスの探検は、探し、調べ、こういう疑問を尋ねまわることだった。それは迷路を進んでいくということ。

　この町自体が、感覚、情報、文化、人々、神話、歴史の迷路になっている。本物の迷路よろしく、複雑に重なり合い、入り組んで矛盾に満ち、また、全身で体感できる楽しいモザイクだ。人はバナーラスに一度迷いこんだら、簡単に離れることはできない。この町は、あらゆる石や街角に生命を吹き込む物語の魔力で人を虜にしてしまう。旅人に魔法をかけて、膨大な体験の罠にはめてしまうのだ。この町で迷子になることはまったくもって自然なことであり、そしてそれがバナーラスを知る第一歩なのである。

カルパナ・スブラマニアン

2000年、インド国立デザイン学院卒業。コミュニケーション・デザイン科で映画・ビデオ製作を専攻。1998年、ストリート・チルドレンのためのマルチメディア・デザイン・プロジェクト総合チームの一員として、アウディ国際デザイン賞を受賞。作品には、『21 Stories Anonymous』、『Light Box Transformation』、『Light and Colour』がある。また、音楽専門チャンネル用のプロモーション・フィルムも作っている。Sacred World Foundationのための短編ドキュメンタリーや、受賞もしたバナーラスに関するマルチメディア展示、ザ・クロッシング・プロジェクトのビデオ・インスタレーションを制作した。インドの路上に描かれたストリート・アートを写真とビデオで記録したこともある。現在はニューデリーのガンディー博物館のためのフィルム・シリーズをSacred World Research Laboratoryと共同製作している。

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迷路