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インターナショナル・コンペティション

審査員
イヴァルス・セレツキス


- ●審査員の言葉

 この世界で生きぬくために日々戦っている「ちっぽけな人間」の考えや行動を見つめ理解することがとりわけ重要である。彼らは子どもを養い基礎教育を与え、この時代につつましい生活を送ろうとしている。

 強力なマスメディアはありのままの現実を無視しながら自らのルールに従って、表面的で商業主義的な世界を形成する。一方、人間社会のより現実的な様相の表象を世界に提示する芸術家や作家は今なお存在している。彼らのこの表象は、正直に真実を伝えるということが主な義務であるドキュメンタリー映画作家が提供するのだ。

 現在、私たちは特に小さな国々においては多くの新しい問題に向きあっている。ドキュメンタリー作家は、グローバリゼーションの波にあがく現代人が空虚の感覚におびえないために、どのような救いの手を差し伸べることができるのであろうか。自分の文化、言語、民族、ひいては自分自身との関係を失ってしまう危険性から逃れるために人間に何を与えることができるのであろうか。現代人を文化と民族との対話に参加させ、画一的な原始的な大衆の中に埋没させないようにするために何ができるであろうか。

 私はそれらの答えを知るために、山形映画祭に参加して、世界のドキュメンタリーの数々を見ることが重要な機会と思っている。そこでは社会発展の段階が突きつける、新たにわいてくる疑問に答えられる作品に出会えるかもしれない。

 参加者もドキュメンタリー作品が社会との対話に成功する可能性を信じることを望む。


イヴァルス・セレツキス

1934年ラトヴィア共和国リガ生まれ。ジェルガヴァの農業アカデミー食料技術部を1957年に、モスクワ国立映画学校を1966年に卒業。リガ映画撮影所で1958年から働き始め、アシスタントカメラマン、ニュース映画カメラマン、撮影監督を経て、1968年より映画監督となる。現在は製作会社、ヨーロッパ・ドキュメンタリー映画シンポジウムの映画監督である。彼の作品は国内外の映画祭で、社会変容に対する綿密で洗練された分析によるドキュメンタリーとして注目されている。主な作品に『Encounters in Guines』(1968)、『The Widening of the World』(1980)、『Come Down, Pale Moon!』(1994)など多数。『踏切のある通り』(1988)は1989年の第1回本映画祭インターナショナル・コンペティション部門で大賞を受賞。


新・踏切のある通り

New Times at Crossroad Street
Jaunie Laiki Skersiela
- ラトヴィア/1999/ラトヴィア語、ロシア語/カラー/35mm (1:1.33) /85分

監督・撮影:イヴァルス・セレツキス
脚本:タリヴァルディス・マルゲーヴィチ
編集:マイヤ・セレツカ
録音:アイヴァルス・リエクスティンシュ、ニコライ・グリドニェフス
音楽:イヴァルス・ヴィグネルス
製作:バイバ・ウルバーネ
製作会社:EDFS
提供:ナショナル・フィルム・センター(ラトヴィア)
National Film Centre, Latvia
Elizabetes 49, Riga, LV1010 LATVIA
Phone: 371-7-505079 Fax: 371-7-505077
E-mail: lelda.ozola@nfc.gov.lv

1988年の『踏切のある通り』から10年。ソビエト連邦は崩壊し、踏切のある通りがあるリガを首都とするラトヴィア共和国は、今では独立国である。セレツキス監督はこの街と人々が変化したこと、変わらなかったことを暖かい眼差しで見つめ、一遍の昔話のようなナレーションでその物語をユーモアとぬくもりとペーソスを込めて語る。



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