アンゲロスのフィルム
Angelos' Film-
オランダ/2000/英語/カラー、モノクロ/ビデオ/60分
監督:フォルガーチ・ペーテル
撮影:アンゲロス・パパナスタシウ、他
編集:カティ・ユハース
音楽:ティボル・セメズー
ナレーター:ヨハナ・テルステーヘ、シャロテ・ファンディク、アッド・ファンケンペン
製作:セサール・メッセメーカー
製作会社・配給:ルーメン・フィルム
Lumen Film
Korte Prinsengracht 17-D, NL-1013 GN, Amsterdam THE NETHERLANDS
Phone: 31-20-623-2600 Fax: 31-20-625-4830
E-mail: sales@lumenfilm.demon.nl
ある家族の歴史とギリシャの歴史。映画はアンゲロスの家族のホーム・ムービーを用い、妻や子どもとの幸福な日々が、ナチス侵攻によってしだいに暗い影をおびてくる様子を描く。アクロポリスにナチの旗がひるがえり、やがて多くのアテネ市民が命を失う。アンゲロスはこの恐怖のすべてを記録すべきだと考え、フィルムを確保するため極秘にあらゆる手を尽くす。惨劇の光景の数々。道端に無残に吊るされた人々。映画は時に歴史の証言者となる。これはその記録である。
【監督のことば】私の作品は、ファウンド・フッテージのなかでもいわゆるホーム・ムービーを用いてつづる「時間考古学」ともいうべき旅行記だ。ナチスとイタリアの占領下アテネの知られざる個人の歴史の旅へみなさんをご招待したい。当時のニュース映像は内容を検閲されているか、特定のイデオロギーを表明するものか、純粋に情報伝達の目的で用いられていたものだが(私の作品のなかではこれらをカウンターポイントとして用いている)、それに対してアマチュア人類学者が撮影したホーム・ムービーは私たちにとって最適の案内役および「時間の追跡者」である。われらがヒーローは戦時下のアテネという時空間に存在しつつも、同時に、自分がこっそり撮影している映像が将来上映され、受け入れられることを望む映像作家でもあった。隷属状態にある国家の国民である彼が想定した未来の観客とは、解放された統一ギリシャの人々だった。ところで彼が予測しなかったのは私たちが今ここで、彼のメッセージを私の仲介によって受け取っているということだ。
アンゲロスの他人の苦痛や受難への共感は深く、いまわしい出来事を記録する彼の姿勢は責任感あふれるものである。そしてそれらは、彼自身の世紀末貴族としての生活と並行するものであった。愛国者であるということは、政党や階級への所属の問題というよりは、もっと大切であり、またささいな問題でもある。この作品の勇壮なパワーはそのことを示している。
ただそれ以上に、私たちの傷つけられた想像力を補完するためにこの作品を作っている間は、「パッチワークづくり」のようで楽しかったということを告白しなくてはならない。
フォルガーチ・ペーテル
1950年ブダペスト生まれ。現在も同地を拠点とするメディア・アーティストであり社会科学者。1978年、ベラ・バラージュ・フィルム・スタジオにてインディペンデント映像作家としての活動を始める。1980年代よりビデオ・パフォーマンスやビデオ・インスタレーションの発表を開始。1983年プライベート・フィルム&フォト・アーカイヴ・ファウンデーションを設立。また、「個人的フィルムや写真の調査プロジェクト」に従事する研究者でもある。作品に『Dusi & Jeno』(1989)、『The Notes of a Lady』(1991)、『Free Fall』(1996)など。受賞歴も多数。これらは「Private Hungary Series」の一環として発表されたものである。 |