審査員
ハルトムート・ビトムスキー
●審査員の言葉
ドキュメンタリー映画作家は世界を作り出しはしない――彼は世界にやって来るのだ。そしてドキュメンタリー作品は世界に対して「イエス」と言うものであり、と同時に「ノー」とも言っている。ウンベルト・エコーはかつて創造力を、新しいものを作り出すことよりは、すでに存在している素材を使ってそれを異なったやり方で整理し直すことだと定義した、このやり方が異なることこそ、ドキュメンタリーを重要なものとするのだ。
ドキュメンタリーはすでにそこにある題材を使って創造する究極のやり方だ。人とモノ、事実と状況。我々はそこに存在の他のモードからの痕跡と刷り込みがあることを期待するが、しかしそれは異なった文脈のなかにおいてだ――視覚性と明確に認識できる視点の文脈の中で。
結局のところ、ドキュメンタリーは長編フィクションからそうかけ離れたものではない――唯一の違いはエキストラや小道具が取って代わって主役を演じはじめるのだ。ただしそのストーリーは映画のなかだけで完全に意味をなすものではないし、映画のなかで始まるのでもなければ映画のなかで終わるのでもない。
映像のなかには目に直接見える以上のものがあるのだ。
ハルトムート・ビトムスキー
1942年ドイツ北部に生まれる。ベルリン自由大学と、ベルリン映画テレビ・アカデミーで学び、フリーの脚本家・プロデューサーとして活躍し、1970年にハルン・ファロッキとの共同監督作『The Division of Every Day』で監督デビュー。彼の作品はドイツの歴史と現在に関するもの(『German Pictures』1983、『第三帝国アウトバーン』1985)、映画に関するもの(『Cinema and Death』1988、『Cinema and Wind and Photography』1991、『Playback』1995)、芸術に関するもの(『Imaginary Architecture』1993)など幅広い主題を扱っている。映画雑誌の編集にも携わり、ヨーロッパおよびアメリカ各地の大学や美術学校で教鞭もとっている。現在、カリフォルニア芸術学院フィルム・ビデオ・スクールの校長。 |
B-52
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ドイツ、アメリカ/2001/英語/カラー、モノクロ/35mm (1:1.85) /112分
監督・脚本:ハルトムート・ビトムスキー
編集:テオ・ブローミン
撮影:フォルカー・ラングホッフ、ヒューゴー・クロイス
録音:ゲルハルト・メッツ、ジェイムス・ベニング
製作:ハルトムート・ビトムスキー、アルベルト・シュヴィンゲス
製作会社:ビック・スカイ・フィルム、コーフィルム
提供:ハルトムート・ビトムスキー
Hartmut Bitomsky
California Institute of the Arts
McBean Parkway 24700, Valencia, CA 91355 USA
Phone: 1-661-253-7825 Fax: 1-661-253-7824 E-mail: bitomsky@calarts.edu
B-52長距離爆撃機。1947年に設計され1952年に実戦配備された。米ソ冷戦時代のアメリカ軍の主力兵器のひとつであり続け、冷戦終結後でも湾岸戦争や、コソヴォ紛争のセルビア爆撃に使われた。今後もあと30年間アメリカ空軍の主力爆撃機であり続けるという。映画はこのアメリカ産業の技術力の粋でもある機械の命運を通して、アメリカと世界が戦争の周りに作り出した“文化”を分析する。