安らぎの土地
Southern Comfort-
アメリカ/2000/英語/カラー/35mm (1:1.85) /90分
監督・撮影・編集・製作:ケイト・デイヴィス
録音・共同製作:エリザベス・アダムス
音楽:ジョエル・ハリソン
製作会社・提供:キュー・ボール・プロダクション
配給:フィルム・トランジット・インターナショナル
Films Transit International
402 East Notre-Dame, Montréal QC H2Y 1C8 CANADA
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アメリカ南部、ジョージア州の片田舎を舞台に、女性として生まれ結婚して2人の息子を育てながら、その後は男性として生きることを選んだ、ロバート・イーズの生き方を見つめる。一方ローラは男性として生まれながら今は女性として生きている。性差を超えて、2人は恋に落ちた。ロバートは卵巣ガンにかかり(20人の医者が診察を拒否した)、ローラは傍らで彼の回復を願う。この映画は彼らの生き方を静かに見つめることによって、彼らを取り巻く社会の現実を照らし出している。
【監督のことば】政治的なことを穏やかに物語るという私のドキュメンタリー映画に対するアプローチを最も明確に表している作品が『安らぎの土地』だ。私がロバート・イーズに出会ったのは1998年。メリーランドでのFTM(female-to-male、つまり女性から男性へ)集会であった。ロバートは自分の卵巣ガンのこと、治療拒否にあったこと、そして2人の息子を産むことで自分の身体に対して反逆罪をおかしているような気がしたことなどを語った。その1週間後、電話をした私に、彼は生まれて初めてトランスジェンダー(TG)として顔を出すことに同意してくれた。「きっと電話がくるだろうと思っていたよ」と言って。しかしこの映画の製作はリスキーな企画だった。ロバートの死期が近づいていた。私は資金集めの時間もないままに、NYの家族から遠く離れたジョージア州の片田舎で微妙な状況に飛び込みつつあった。その上、普段は監督と編集をしているが、今回は新しく買ったDVカメラで撮影もこなさねばならなかった。時には録音もこなし、ひとりだけで撮影した。
しかし、私よりも大きなリスクをおかしたのはTGであることを隠して暮らしているのに本作に出演してくれた南部の人たちだ。TGはいまだに多くの人から人間扱いされず、家族、友だち、雇用主から拒絶されることも多い。さらに、公共の場でTGだとバレると暴力のターゲットになる。
そんなリスクをおかしてもロバートと彼の友人たちは映画に出てくれた。ロバートはこう言っていた。「もし、この映画を見たFTMの男性がひとりでも医者に行ってくれたら。“ノーマル”の人たちがひとりでも偏見を改めてくれたら。それだけで出る意義があるんだ。」
ケイト・デイヴィス
1960年生まれ。ハーバード大学在学中に映画製作を開始し、手掛けたドキュメンタリー作品のテーマは幅広い。劇映画は虐待された3人の家出少女についての長編『Girltalk』をはじめ、『A World Alive』、『Requiem for the Planet』、『Total Baby』、『Vacant Lot』を製作している。プロデュースの仕事としては、TGコミュニティの市民権獲得運動を描いたドキュメンタリー『Transgender Revolution』などがあり、いずれもアメリカのケーブルテレビで放映された。編集として参加した作品は『パリ、夜は眠らない』や『Sherman's March to the Sea』など。 |