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[パキスタン、カナダ]

夜明けに向かって

This Stained Dawn
Dagh Dagh Ujala

- パキスタン、カナダ/2021/ウルドゥー語、英語/カラー、モノクロ/DCP/89分

監督、撮影、製作:アナム・アッバス
編集:オマル・マジード
追加撮影:ハヤー・ファーティマ・イクバール、グル・ナヤーニー、マフヌール・マハル、タジーン・バリー、ワルダ・アーディル・シャー、サーディア・カトリー、ハーディー・カトリー、マナール・カーン、ファーイザン&ダーニヤール
音楽:ラヒーマ・アラム
アニメーション:アジーザ・アフマド
提供:Other Memory Media

カラチからイスラマバード、各地の路上で激しいカウンターやヘイトスピーチにさらされながらも、「オーラト・マーチ(女性の行進)」が行われた。その数か月前、カラチでは、この国際女性デーに合わせた集会とデモを準備する女性グループが立ち上がる。若い学生から活動家、彼女たちの知恵と労苦としなやかな連帯が、デモ停止を求める裁判も乗り越え、逆風のなかに生き生きと描かれる。フッテージやアニメーションも交えてパキスタンのフェミニズムを歴史のなかに捉えてそこに息を吹き込み、女性たちが直面する現実やフェミニストの闘いへと時代を超えてバトンをつなぐ。(WM)



【監督のことば】2019年から2020年にかけてデモ行進の後方で運営コミュニティと撮影を重ねていたとき、私はその現場に友として、ともにデモを組織する仲間のひとりとして加わっていた。本作には、内部関係者の制作した映画ならではの信頼と親密さが存分に見てとれる。編集段階でも同様に、複数の都市から集ったアクティヴィストやデモ運営者たちに対する、私のたゆまぬ仲間意識、彼女たちの表明する懸念や望みが前面にあらわれ、それらはすべて映画に活かされている。

 フェミニストを犯罪者とみなし、その運動を反政府活動家から資金援助された反体制的なものと非難するようなナラティヴを国家が率先して押し進めるなか、この映画は、草の根運動の現実や社会への政治的イデオロギー的関与、現時点で上がっているさまざまな声を紹介することでその潮流にカウンターを食らわせる。あるいは国外の観客に向けては、ムスリム女性を被害者扱いする従来の全世界的なナラティヴを覆し、それにかわる私たち自身の真実――私たちには反帝国主義的左翼闘争とも交叉する、抵抗の奥深い歴史がある――を突きつけるのだ。

 本作はまた、固い絆で結ばれたアクティヴィストやデモ運営者やアーティストたちのコミュニティから出てきた、いくつもの声の集合体でもある。本作の音楽やその聴覚面での探求には、ラヒーマ・アラムによるオリジナル楽曲をはじめ、制約をものともしない女性アーティストたちとのコラボレーションが含まれているし、アニメーションを用いた作中のシークエンスは、もともと2020年のデモ行進前日に、運営のひとりでフェミニスト・アーティストのザフラ・マルカニが行ったタロット占いを着想源としたものだ。このパートを担当したアニメーターのアジーザ・アフマドは、2018年からオーラト・マーチでポスターのアートワークやグラフィックデザインを有志で引き受けてくれている人物だが、この歴史的なデモ行進をヴィジュアル面で決定づけた彼女のアーティストとしての声は本作においても引き継がれている。


- アナム・アッバス

パキスタンを創作の拠点とするパキスタン=カナダ人映画作家。「Other Memory Media」主宰。はじめて製作・撮影を務めた長編作品『Showgirls of Pakistan』(2020)は、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭2020コンペティション部門でプレミア上映され、2021年2月にはデジタルメディア「VICE」で全世界に配信された。監督作としてはこれまでに、ウェブ動画シリーズ「Ladies Only」のほか『Saya』(2019)『Lucky Irani Circus』(2015)のふたつの短編があり、本作は長編ドキュメンタリー監督デビュー作にあたる。また、パキスタン・ドキュメンタリー協会(DAP)の創立メンバーにも名を連ね、アングリー・ガール・バンド「Garam Anday」の片割れとしても活動中。