蟻の蠢き
Ants Dynamics螞蟻動力学
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中国/2019/中国語/カラー、モノクロ/デジタル・ファイル/120分
監督:王楚禹(ワン・チューユー)、徐若涛(シュー・ルオタオ)
撮影:陳博(チェン・ボー)、丹宁酸(ダン・ニンスァン)、馮波(フォン・ボー)
編集:文珹灝(ウェン・チョンハオ)、黄京昆(ホァン・ジンクン)
製作:馮波
提供:徐若涛
チャイナテレコムを理由もなく突然解雇された元労働者たちが、会社を相手に労働者の権利を訴え、アーティストグループとともに戦う。冒頭に出てくる饅頭を咥えた労働者たちの巨大ポスターはインパクト大! アーティストが扇動役となり、はじめは冷めた表情で話を聞いていた労働者たちも次第にパフォーマンスに協力的に。お互いを鎖でつないで抗議デモを行ったり、電柱に登ったり。労働者たちそれぞれの背景も紹介され、会社社長への激しい直談判のシーンも。終盤、自己紹介をしながら全員が上半身裸で撮影される。(YK)
【監督のことば】王楚禹 私がチャイナテレコムの労働者たちの運動に関わった動機は、パフォーマンスアートの方法を用いて社会的事件に介入してみたかったからです。街頭でのパフォーマンスが失敗してから、事件を進展させるためにドキュメンタリーのかたちで展開していくことを考えました。そこにパフォーマンスアートの映像やデザインされた画面を取り入れたいと思い、それで実験映画の徐若涛を招き入れたのです。彼だけでなく、56人の労働者、20数名のアーティスト、ひとりの弁護士が制作の主体となりました。
私は労働者たちに「あなたたちが勝ってもアートは勝たないし、あなたたちが負けてもアートは負けない」と言ったことがあります。ジャーナリストや人権派弁護士が公共の場から排除される社会のなかでアーティストが人権活動に関わることは、結果に対して有効かどうかの問題ではなく、アートが必要とされているかどうかの問題です。別の言い方をすれば、社会運動への参加は、アートとアーティストにとって一種の「自己救出行動」なのかもしれません。
徐若涛 王楚禹にこの企画に参加しないかと声をかけられたとき興奮と戸惑いを覚えました。興奮とは、いつか自分がやりたいと望んでいた「群衆」が撮れるということで、撮影にきわだった視覚的な試みを期待したのです。労働者の人権活動に深く関わっていた王楚禹は、老いた労働者たちの「身体性」を街頭で巧みに放出させました。この作品の撮影に後から加わった私にとっては、王楚禹とのコラボはたいへん創意に満ちていて、アーティストならではのオープンな姿勢に多く助けられました。
パフォーマンスアーティスト、キュレーター。1974年、陝西省生まれ。1994年から北京で芸術創作を始め、現在に至る。2007年から2016年にかけて10回開催された、パフォーマンスアートの都市連合展「谷雨パフォーマンス」の発起人となり、キュレーションに参加。2016年、パフォーマンスアート組織「潜行社」を創設した。
徐若涛(シュー・ルオタオ)
ビジュアルアーティスト、映像作家。1968年、遼寧省瀋陽市生まれ。初の長編実験映画『反芻』(2010)は、2010年バンクーバー国際映画祭でドラゴン&タイガー賞にノミネートされる。その後も『玉門』(2013)『表現主義』(2017)などの実験映画を制作している。