特別招待作品
武漢、わたしはここにいる
Wuhan, I Am Here武汉,我在
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中国/2021/中国語/カラー/デジタル・ファイル/153分
監督:蘭波(ラン・ボー)
撮影:謝丹(シエ・ダン)、付世強(フー・シーチャン)
編集:王垚(ワン・ヤオ)、王磊(ワン・レイ)
音楽:鲁卡(ルカ)、肖瀛(シャオ・イン)
整音:鲁卡(ルカ)、龍飛(ロン・フェイ)
記録:江嘉偉(ジャン・ジアウェイ)
カラリスト:劉良熊(リウ・リャンション)
ライン・プロデューサー:葛藝峰(グー・イーフォン)
プロデューサー:裴培(ペイ・ペイ)
提供:裴培(ペイ・ペイ)
2020年1月、初監督の劇映画撮影のために武漢に入った監督とクルー。突然の都市封鎖に遭遇した彼らは、路上に出て撮影を始める。医療体制が逼迫しはじめ、非感染者であるにもかかわらず必要な治療を受けられない重病者や高齢者。無料で物資提供するボランティア活動に携わり、ロックダウン下で物資供給が行き届かない老人世帯や福祉施設、路上生活者らの存在を知ったクルーは、そこで見たものを撮影しながら奔走する。新型コロナウイルス感染症により根本から変わってしまった日常。2020年から世界中で現在進行形のこの状況を照射する。YIDFF 2021にて世界初上映。
【監督のことば】2020年初め、新型コロナウイルスが感染爆発したとき、私と撮影クルーはちょうど武漢でデビュー作となる劇映画の準備をしていた。突然の都市封鎖で、防疫の物資も乏しく、進退もできないなか、連日インスタントラーメンばかり食べていた。たったひとつのN95マスクはクルーの撮影監督が所持しており、彼は日中出かけて撮影し、夜に戻るとマスクを乾かしていた。
武漢に留められたクルーの多くは湖北省出身で、故郷のために何かしたいという切迫した想いにかられていた。我々はコロナ禍初期に『守望空城(空の都市を守る)』という短編を完成させた。これはすぐにSNSで広まり、クルーはボランティアやメディアからの援助を受けることができた。
そこで私は長編が撮れるのではと考えた。我々クルーがボランティアと行動し、他者を助け自己も救う。その過程をすべて撮影するのである。
病院と住民のコミュニティを舞台に撮影することは諦めた。病院とコミュニティは厳重なコントロール下にあり、入っていくことができない。私はボランティア/一般市民の視点のほうがよりチャレンジングであると考えた。実体験から「民間支援」の重要性を感じていたし、普通の人もコロナ患者と変わらないくらい生活上大きな影響を受けているにもかかわらず、まるで関心を持たれていないからだ。
「暴風の中心から遠く離れた場所で暴風を記録する」という理念が、100日に及ぶ『武漢、わたしはここにいる』の撮影を支えていた。
私はふたりの友人からの意見を取り入れ、「クルーの救援行動を中心に、コロナ禍におけるさまざまな現場の人と出来事をつないでいく」というかたちで素材を作り上げた。
具体的には、我々クルーと民間ボランティアが前線を奔走しながら、SNSを使って封鎖中の武漢の現場や、援助が必要な人に何をどうすべきかを伝えていく。そうして物理的に隔絶された「封鎖域」を打破し、非感染者や老人、ホームレス、児童などを助けるのである。我々のカメラが捉えたこれらの行動の記録が、次に続く人たちの総括、改善の役に立てばと考えている。
映画批評家として中国の映画雑誌やウェブサイト、SNSなどで100万字を超す批評を書いてきた。また、テレビ局や動画サイトのドキュメンタリー番組の監督や記者などを務めている。2004年にはテレビドキュメンタリー『イスラエルの中国人労働者』の編集を担当。2009年から映画の編集と脚本の仕事を始め、本作が初の長編監督作品である。次作は「時間と記憶」をテーマにした劇映画を撮影する予定。