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YIDFF 2013 インターナショナル・コンペティション
サンティアゴの扉
イグナシオ・アグエロ 監督インタビュー

光が明かす 空間の歴史


Q: この映画は1年間に撮影したものを編集した作品ですが、1年と期間を区切ったのはなぜですか?

IA: 時間は、映画をつくる上での大事な要素です。脚本がある場合は、撮影するときにこれ位かかると予想できますが、これはドキュメンタリー。1年という時間の中で撮影したものを、どう見せていくかを考えました。そういう意味では賭けでもありました。

Q: 家を訪れる人を撮影の対象にしたのはなぜですか?

IA: 一種のゲームです。この映画では、私の知らない人を撮ろうと思いました。来訪者がなぜ家のベルを鳴らし、ドアを叩くのかというと、中にいる人と何らかの関係を築きたかったり、何かを求めていたりするからです。そしてドアが開くと、その部分も家の空間の一部になります。来訪者はその空間の一部になるためにベルを鳴らすともいえます。中にいる人がドアを開けるのは、来訪者を認めるということ。そして、彼らにその場所をも与えます。相手が私の訪問を了承し、カメラの前で自分の話を始めたのは、私のゲームに乗ったということ。知らない人がある種の関係を持ちうるというのは、面白い発見でした。これは、ある意味でとてもまじめなゲームです。また、この映画をつくることで、自分の家の中の空間とは何か、考えようという意図もありました。

Q: 家はどういう空間だとお考えですか?

IA: 家は、壁に囲まれた限られた空間ですが、町という大きな空間の中のひとつの固まりともいえます。それから、歴史的な空間ともいえます。空間には物がたくさんありますが、そこには別の空間で、別の時に起こった歴史が詰まっています。それは思い出やイメージを喚起するものです。小さな空間を読むことは、世界全体を読むことにつながります。それで、小さな空間を使って映画を作ろうと思いました。

Q: なぜ太陽の光を追って撮影をしたのでしょうか?

IA: 動物は皆、太陽を追いかけます。それは暖かいし、明るいから。光は物を際立たせ、明らかにするものです。光があるから空間を見ることができます。空間に光が当たると、影の中から物が浮き出てきます。物はそれ自体、物でしかありませんが、じっと眺めていると本来見えるもの以上の、隠れていたものが次第に見えてくることがあります。そのためにはカメラと観察する人が必要です。光はいつも動いています。空間が光の動きによって変化するのも面白いことです。1日のうちでも変わるし、1年のうちでも変わります。見ている人は、その動きから物語をつくりだすことができます。

Q: いろいろな解釈ができる余地を残しているのはなぜでしょうか?

IA: ある空間を提示し、それを読むという行為は、映画を観る人がすることです。 空間は本のようなもので、そこには物語が展開していますが、それ以上に読む人の想像力が展開されています。受け取り方や、何を受け取るかは、その人の経験や想像力、思い出などが入り混じり、多様になると思います。映画は一種の爆弾であり、それが落ちるといろいろな方向に飛んでいくものだと考えています。

(採録・構成:宇野由希子)

インタビュアー:宇野由希子、木室志穂/通訳:星野弥生
写真撮影:楠瀬かおり/ビデオ撮影:木室志穂/2013-10-13