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日本/1998/日本語/カラー/16mm/136分

監督:森達也
撮影・編集・録音:森達也、安岡卓治
音楽:朴保(パク・ポー)
製作:安岡卓治
製作会社・提供:「A」製作委員会
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-32-6-502


森達也
Mori Tatsuya


1956年生まれ。立教大学在学中より映画製作集団「立教SPP」に参加し、黒沢清、石井聰互らの作品に出演。1987年テレビ番組製作会社に入社。以後40本以上の報道、ドキュメンタリー番組を手掛ける。題材には小人プロレス、超能力者、放送禁止歌などを取り上げ、独特の視点で番組を制作。初の長編映画『A』は1997年本映画祭で上映。今回上映されるのは再編集されたインターナショナル・バージョンで、ベルリン、香港、釜山、バンクーバーなどの国際映画祭で上映された。現在は、戦後占領下に起きた下山事件を題材に、次回作を撮影中。

地下鉄サリン事件(1995年)の半年後に撮影を開始し、2年3ヶ月を要して完成した、オウム真理教をめぐる唯一のインサイド・レポート。あらかじめ結論を準備せず、分かり急がない演出家のしなやかな取り組みが、「あちら」(若い出家信者たち)と「こちら」(警察、マスメディア、わたし、あなた)をコインの裏表のように相対化させ、TVのニュース映像にはない複眼的視点を提供する。その視線のなかで「あちら」と「こちら」双方の聖と俗、正義と偽善が溶解し、映画の意志はこのカルト集団の闇の解析ではなく、むしろそれを生んだ「こちら」側の─つまり、わたしやあなたの─精神の過剰と欠乏を志向し始める。
 ドキュメンタリーが表象し、あるいは表象していないものを視、考える醍醐味をあたえてくれる作品。だが、今も若い信者を獲得し続けるオウムの広報的側面 が皆無とはいえず、一筋縄では行かない。宗教不在の日本社会において、ますますアクチュアルな所以である。[福島行雄]

【監督のことば】
前回の山形では、ぎりぎりまで事務局の皆様に待っていただいたのに、最終的に編集が間に合わず、完璧とはいえない形で上映という運びになってしまい、それがずっと心残りでした。(最も、この編集バージョンは、密かに「山形バージョン」と呼んでいて、『A』国内バージョン、国際バージョンと併せて3つのタイプのうち、個人的には僕は、いちばん思い入れがあるのですが)
 僕にとっては初めての劇場用長編を、初めて観客の皆様にお見せして、更には初めて舞台挨拶までも、前回の山形では経験させてもらいました。それからの2年間、『A』の公開を巡ってはいろいろありましたが、映画という存在が、「観客に見せる」という行為を続ける限り、制作者にとっても決して終らないものだということを、今つくづく実感しています。
 次回作の撮影も今進めていますが、しかし『A』は決して過去の作品ではなく、オウムをめぐる僕たち日本人の困惑が決して終らないことと同様、これからも機会を探して公開し続けていこうと決意しています。そんな矢先に、再び山形で上映する機会を頂いたことは、僕にとって何よりも心強い励ましです。
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