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    The People of Angkor
    Les gens d'Angkor

    - フランス/2003/カンボジア語/カラー/ビデオ/90分

    監督:リティー・パニュ
    撮影:プラム・メサール
    編集:マリ=クリスティーヌ・ルージェリー、イザベル・ルディー
    録音:シア・ヴィサール
    音楽:マルク・マーデル
    製作:アン・シュッフマン
    製作会社、配給:INA

    輝かしいアンコール王朝の歴史を物語るアンコールの遺跡群。ポルポト政権下の内戦では戦場となり、現在は世界中からやってくる観光客で賑わうが、決して住民の生活は豊かではない農村の地。ここに住む遺跡修復に携わる人々と土産売りの少年が、遺跡に刻まれた歴史・伝説を辿る。クメール文化と政治のダイナミズムに触れ、現代と悠久なる時を行き交い、未来へ思いを託す。祖国を描き続ける監督が、雄大な時の流れと希望をしなやかに描く。



    【監督のことば】この作品は単なるアンコールの遺跡に関しての歴史や建造物についての映画ではない。その土地で生きている人々を描いたものだ。クメール美術に夢中な海外の旅行者たちは気にもとめず通り過ぎてしまうが、内からの視点は、カポックの大木と寺院の影のなかに、そこで生きているものたちの陰影をとらえる。修復現場のバプオンでは、作業員たちが古代彫刻の散在した石を組み立てる。日常生活の情景を静かに喚起し、慈悲深き天女アプサラの美を祝う歌と共に、天地創造の神話から壮大な戦いの叙事詩まで、まるで巨大なジグソーパズルのように、古代クメールの歴史が徐々に素描される。

     貧しいため学校に行けず、文字の読み方を学んだことがない土産売りの少年は自分の将来を案じている。かつては農民で、今は修復作業に従事する男は、自分たちの土地から切り離されたと感じている。農地で働いていた頃は辛かったが、それがむしろなつかしい。別の農民は闘鶏に望みを託し、レモンスープと名付け、慈しむ。今なお神が宿る崩落した寺院の石の上に、早朝の冷たい光りがそそぎ、僧たちは瞑想し、祈りを捧げる。

     人々の運命は、互いに絡み合いひとつになり、遺跡寺院の石壁のように最後に物語が浮きあがっていく。過去と現在が混然となり、神と人間が補いあい、生きるための苦悩をユーモアでもって表現できる場所。苦しみと希望の物語は、まるで運命の持つ偶然性を超越する芸術のようである。

    (プレスリリースより転載)


    - リティー・パニュ

    プノンペン生まれ。フランス国立映画学院卒業。ドキュメンタリー及び劇映画を多数製作。作品歴にアミアン国際映画祭グランプリ受賞作品『Site II』(1989)の他、『"NEAK SRE" Les Gens de la Rizière』(1994)と『戦争の後の美しい夕べ』(1996-97)の2本はカンヌ国際映画祭に出品、後者は1998年の東京国際映画祭でも上映された。その他に『Bophana, une tragédie cambodgienne』(1996)、『さすらう者たちの地』(2000)はYIDFF 2001でロバート&フランシス・フラハティ賞を、『S21 クメール・ルージュの虐殺者たち』(2002)はYIDFF 2003で優秀賞を受賞。最新作『Les Artistes du Theatre Brule』(2005)も2005年のカンヌ国際映画祭で上映され、話題となっている。