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    The 3 Rooms of Melancholia
    Melancholian 3 huonetta

    - フィンランド、ドイツ、デンマーク、スウェーデン/2004/ロシア語、チェチェン語、アラビア語、フィンランド語/カラー、モノクロ/35mm (1:1.85)/106分

    監督、脚本、撮影:ピルヨ・ホンカサロ
    編集:ニルス・パーグ・アンデション、ピルヨ・ホンカサロ
    録音:マルッティ・ツルネン、マート・オッァ、クリスティーナ・ペルヴィラ、ヤーク・エリング
    音楽:サンナ・サルメンカッリオ 
    製作:クリスティーナ・ペルヴィラ 製作会社:ミレニウム・フィルム
    共同製作会社:リスベト・ガブリエルソン・フィルム、マジック・アワー・フィルムズ、MA.JA.DE.フィルムプロダクション
    配給:デッカート・ディストリビューション

    チェチェン紛争をめぐる子どもたちの生活を3つの場面から追う。ロシア北西部サンクトペテルブルクの士官学校では、幼い子どもたちが軍事教練に明け暮れている。廃墟と化したチェチェン共和国の首都グロズヌイでは親子の生活が引き裂かれ、隣国イングーシ共和国の難民キャンプでは子どもたちが空爆の音に怯えている。見守るように慈しむ眼差しのなかに、見据えるべき未来を失った悲惨な状況下で生きる子どもたちの表情が浮かび上がる。



    【監督のことば】個人的な出発点

     「神聖なるものと邪悪なるもの三部作」(長編ドキュメンタリー映画『Mysterion』『Tanjuska ja 7 Perkelettä』『Atman』)を完成させると、私はドキュメンタリー映画に求めていたものを、自分自身のなかから一掃したような気分になった。それはドキュメンタリーの持つ、物事の純化と情け容赦なく具体化する作用である。

     そして私は夢の論理に魅力を感じ、強く惹きつけられた。それを自然に描くのにもっとも適した手法はフィクション映画だ。夢の世界の半分は過去にあり、もう半分は未来にある。

     ところで私はいつも、神聖なるものと邪悪なるものだけでなく、詩的なものと政治的なものにも刺激を受けてきた。私がドキュメンタリーに戻ったきっかけはそこにある。

     私は真実などどうでもいい。すべての思考は流れる泡であり、何ものにも拘泥せず、確固とした形も持たないと考えるからだ。しかし自分が寝ているのでも、夢を見ているのでもない時は、人類という種族がどのようにその人生を生き、歴史を形作り、意思を表明するかを知りたいと思う。

     ヨーロッパは自分の正義の怒りに対処するために、何らかの慈悲を必要としている人々でいっぱいだ。正義の怒りは彼ら自身へはね返る。そして人生は正義をもたらす裁判所ではない。最後に打ち勝つのは、正義ではなく生だ。生命は混沌から上昇する螺旋のなかに生まれ、一瞬、構造を持ったかのように見えるものの、下降する螺旋に乗って新たな混沌のなかに落ちていく。

     敵の虚像をはぎ取るには、正義とともに慈悲を受け入れる必要がある。慈悲は非論理的であり、非合理的だ。言い換えると、まったくなんの見返りがなくとも憎しみへの衝動から自由になることである。。


    - ピルヨ・ホンカサロ

    1947年、ヘルシンキ生まれ。映画作家、撮影、芸術学教授。ドキュメンタリー映画や長編映画の監督、脚本、撮影に携わって25年以上になる。長編、ドキュメンタリー、短編作品は、カンヌ、ヴェネチア、モスクワ、ベルリンなどの国際映画祭で上映され、数多くの賞を受賞している。主な作品は『Tulipää』(1980)、『250 Grammaa』(1983)、『Da Capo』(1985)、『Mysterion』(1991)、『Tanjuska ja 7 Perkelettä』(1993)、1996年、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭でヨリス・イヴェンス賞を受賞した『Atman』(1996)、1998年のAFIロサンゼルス国際映画祭のグランプリとロカルノ国際映画祭でふたつの賞を受賞した『白夜の時を越えて』(1998)などがある。