english
インターナショナル・
コンペティション
  • オート*メート
  • 生まれたのだから
  • 私と運転席の男たち
  • 包囲:デモクラシーとネオリベラリズムの罠
  • 要塞
  • 私はフォン・ホフレル(ヴェルテル変奏曲)
  • ナオキ
  • 稲妻の証言
  • アムステルダム(新)国立美術館
  • 忘却
  • アポロノフカ桟橋
  • RiP! リミックス宣言
  • ダスト ―塵―
  • Z32

  • 審査員
  • ヌリット・アヴィヴ
  • ガリン・ヌグロホ
  • カレル・ヴァヘック
  • 呉文光(ウー・ウェンガン)
  • 吉増剛造
  • アムステルダム(新)国立美術館

    The New Rijksmuseum
    Het Nieuwe Rijksmuseum

    - オランダ/2008/オランダ語、英語、スペイン語/カラー/ ビデオ/120分

    監督:ウケ・ホーゲンデイク
    撮影:サンダー・スヌープ、グレゴール・メールマン、 アドリ・スフローヴェル、パウル・コーヘン
    編集:ハイス・ゼーヴェンベルヘン
    録音:マーク・ウェスナー
    音楽:エルコ・ヴァンデメーベルグ、クリスティアーン・ヴァンヘメルト
    配給:NPO Sales
    製作、提供:ピーター・ファン・ハイステ www.pvhfilm.nl/hetnieuwerijksmuseum

    レンブラント作『夜警』で知られるアムステルダム国立美術館。その大規模な改造計画は、発表されるや否や、アムステルダム市民を巻き込む大騒動に発展した。これまで市民が自由に往来していた通路を縮小し、レストランとミュージアムショップを作ろうとするものだったからだ。地上の騒ぎをよそに、地下収蔵庫で眠る傑作の数々。計画を主導した館長の去就を問う人間ドラマにまで至った顛末を追い、知られざる美術館の内幕に肉薄する。



    【監督のことば】この4年間、アムステルダムにある国立美術館の改修と拡張工事という、魅力的なプロセスを撮影してきた。その格調高い翼部と通路を設計したのは、スペインの建築家クルスとオルティスだ。解体作業が始まり、2008年には「想像を絶するほど美しい美術館」が再オープンし、この映画の公開は、工事の完了と同時期になるはずだった。だが映画は2008年に公開されたものの、美術館は少なくとも2013年までは休館することとなってしまった。

     壊すことは、創るより簡単だということが判明した。この歴史的な建設工事の邪魔をするのは、怒れるサイクリストたち、市行政、および不可解な規制だ。美術館のスタッフが新たな建設許可を待つ間、古い建物内での工事は1年以上保留されたままになった。建物の中は空で、何の活動も行われていない。カメラは、建物内の痛ましい静寂を映像でとらえる一方、美術館スタッフのオフィス内で高まる欲求不満とモチベーションの低下を映し出す。

     この作品は新しい美術館の見事な完成を描く代わりに、新国立美術館の建設工事の出だしの数年に起こった、コントロールの喪失や多くの災難についての映画となった。2人の建築家による基本計画が、どのように希薄化され、無念の妥協に追い込まれたかを明らかにしている。

     この映画における私の目標は、新美術館が生まれる過程の苦しみを観客に肌で感じてもらうことだった。皮肉なことに、このプロジェクトは、民主主義社会における意思決定が、時にどのような結果を生むかをも反映している。建築家の1人が、映画の中でこう言っている。「こんなのは民主主義じゃない。民主主義の悪用だ」


    - ウケ・ホーゲンデイク

    1961年、オランダ生まれ。舞台監督としてキャリアをスタートし、1997年からテレビ用のドキュメンタリーを監督。ホロコーストを逃れた700人のオランダ系ユダヤ人について描いた『Een gelukkige tijd (The Saved)』(1998)は、オランダ・アカデミー賞で最優秀テレビ・ドキュメンタリー賞を受賞。『The Holocaust Experience』(2002)では、ヨーロッパやアメリカで、いかにホロコーストの記憶が絶やされないようにしているかについて描いた。現在は、『アムステルダム(新)国立美術館 パート2』を制作中。