それはとにかくまぶしい
Radiance- 日本/2023/日本語/カラー、モノクロ/デジタル・ファイル/18分
監督、撮影、編集:波田野州平
提供:波田野州平
2020年4月。しばらくの間、友達と会ってはいけなくなってしまった世界。監督は、はっきりした理由はなく毎日カメラを回すことにした。娘と妻、家族で過ごす日々の中にある小さな煌めき。その断片がつなぎ合わされ、親愛なる友達への手紙になる。非凡な感覚で再構成される日常は次第にどこにもない不思議な景色をつくりだし、生と死、受け継がれていく命の愛おしさへと辿り着く。忘却と発見のアヴァンギャルド・ホームムービー。(NRY)
【監督のことば】誰に言われたわけでもないけれど、毎日撮影をするということだけを決めて1年間を過ごしました。その日々を振り返ると、毎日カメラを携えて何かを撮らなくてはいけないという状況だったから目を向けたものがあり、カメラを回し続けたから考えたことがありました。撮りたいものや記録にとどめておきたいものがあるからカメラを回していたのではなく、何よりも先にまずカメラがあったから、引っぱられるようにして「よく見る」という行為を1年間行ったのだと思います。だからこの期間は、見る主体は私ではなくカメラの方にあったと言ってもいいかもしれません。カメラは私の新しい目になっていました。加えて傍らにずっと幼い子どもがいて、彼女がいつも未知に目を見開いていたことが、私に忘れていた目も与えてくれるきっかけになりました。
我が家には娘が生まれてから今までの全人生をかけて描き続けている壁画があります。彼女はここが借家であるという親の心配など微塵も気にせず、びゅーんと壁一面に自分の体の何倍もある伸びやかな色とりどりの線を引きます。そうして完成した絵を眺めて悦に入ることなどなく、すぐその上に新しい線を引き新しい色を塗ります。前の絵が隠れて見えなくなってしまうことにはお構いなしです。やがて絵だけでは飽き足らなくなったのか、写真やシールや自作のオブジェをどんどん重ねて貼っていき、それは完成を放棄されたかのように5年たっても増殖を続けています。その姿勢は天晴と言いたくなるほど潔く、創作意欲は尽きることがありません。彼女は絵筆を使って壁とたわむれることだけに夢中になっているようです。
そんな彼女を見ながら、私も彼女に倣ってたわむれてみようと思いました。まずはこのカメラという機械と、そしてカメラを使ってこの世界と、子どもと、季節と、光と、そして映画とたわむれようと思いながら、この「特殊な1年間」を過ごしました。
1980年、鳥取県倉吉市生まれ、東京都在住。多摩美術大学映像演劇学科卒業。初長編劇映画『TRAIL』(2012)がユーロスペース、第七藝術劇場で公開される。映画詩『影の由来』(2017)で、東京ドキュメンタリー映画祭2018の短編コンペティション部門でグランプリを受賞。初長編ドキュメンタリー映画『私はおぼえている』(2021)はYIDFF 2021の日本プログラムに招待され、ジョグジャカルタ国際ドキュメンタリー映画祭2022の国際長編コンペティションでグランプリを受賞。