約束の地で
In Our ParadiseDans notre paradis
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フランス/2019/ボスニア語、フランス語、ドイツ語/ カラー/DCP/77分
監督、撮影:クローディア・マルシャル
脚本:クローディア・マルシャル、 イアン・シンプソン
編集:マリー・ダコスタ、ジュリー・デュプレ
録音:グザヴィエ・グリエット、 グレゴリー・ペルネ、ニコラ・ロード
プロデューサー:ピエール=オリヴィエ・バルデ
製作会社:Idéale Audience International
配給:Sweet Spot Docs
14年前に故郷ボスニアを離れ、フランス東部で家族とともに暮らすメディナ。その姉インディラは彼女を頼って移住を試みるも、ドイツで難民拒否の現実に直面し、帰国を余儀なくされる。このふたりの女性とその子どもたちが思い描く未来には、いくつもの壁が障害となって立ちはだかり、その実現を阻もうとする。排外主義の高まりのなかでますます居場所を失っていく人々の横顔と、救いの手を求めて発される言葉の声を、映画は極めてドラマティックに捉えることに成功している。(KS)
【監督のことば】『約束の地で』の始まりは、私がメディナと出会った2003年に遡る。当時、フランスでの難民資格を取得したばかりの彼女は、私の祖母の家の向かいにあるシナゴーグに一時避難をしていたのだった。ここに語るべき物語がある――そんな確信を頼りに、揺るがぬ直観に従うことにした私は、やがてボスニア・ヘルツェゴヴィナに赴き、彼女の姉、インディラと出会うこととなる。敵意が増す一方の世界に、居場所を求めて奮闘する二人の姉妹という物語の全貌は、まさにそのとき明らかになったのだ。
インディラを通して私たちは、ボスニア北部にあるロマ人居住区での彼女の日常生活を目にすることとなった。そこでは、周縁に置かれたマイノリティが、日々の暮らしをやり繰りしつつ、どこか別のところへ行くことを夢見ている。一方、フランスにいるメディナの生活は、亡命者のありふれた体験を映し出す。しかし、あらゆる困難と障害を伴うこの体験も、出発と失敗を繰り返しながら、故郷の村を脱出する使命に頑なに挑み続けるインディラの目には、幸福な成功例としか映らない。
姉妹間の対立――すでに「成し遂げた」とされている側とこれから「成し遂げよう」としている側のあいだの対立――から浮かび上がってきたのは、ある興味深い作劇上の展望である。家族や出生地から離れた側にかけられる、留まった人たちを支えなければといった圧力は、次第に隔たりが大きくなっていくように見える二人の姉妹の間に、あまり望ましくない感情をさまざまに生じさせている。とはいえ、互いに譲らぬそんな愛情を分かち合っているからこそ、彼女たちは心の通ったコミュニケーションができるのだ。
私としては、この映画を観ることで観客が何かを感じてくれたらと思っている。たとえば、気掛かりなほど頻繁に目にする誤った思い込みやありふれたレトリックから自由になることを、そしてまた、国境なき世界というユートピアが色褪せて見えるなか、未来を担う世代が星々の彼方に新たなフロンティアを見通そうとしていると理解することを。
パリに住居と活動拠点を置く。ドキュメンタリー映画制作の修士号を取得後、最初の企画となる『The Other Side』を、テキサスでの撮影を経て2010年に完成。2012年には、カリフォルニア、コンゴ共和国、さらにはヨーロッパ各地を撮影して回り、『I am Kombi』も完成させている。2015年にはアーカイヴ映像とアニメーションを用いた子ども向けの5本の短編映画『Qui veut manger des super-héros?』の監督を務めた。本作『約束の地で』は初の長編映画となる。