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死霊魂

Dead Souls
死靈魂

- フランス、スイス/2018/中国語/カラー/ DCP/495分

監督、撮影:王兵(ワン・ビン)
編集:カトリーヌ・ラスコン
録音:ラファエル・ジラルド、 エイドリアン・ケスラー
プロデューサー:セルジュ・ラルー、カミーユ・レムレ、ルイーズ・プランス、王兵
製作会社:Les Films D'Ici、Cs Productions
配給:Doc&Film International

1950年代後半に起きた中国共産党の反右派闘争で粛清され、ゴビ砂漠にある再教育収容所へ送られた人々。劣悪な環境のなか、ぎりぎりの食料しか与えられずに過酷な労働を強いられ、その多くは餓死した。王兵(ワン・ビン)は『鳳鳴フォンミン ― 中国の記憶』と初長編劇映画『無言歌』で描いたテーマを追い続け、8時間を超える証言集にまとめ上げた。生き延びた人々が語る壮絶な体験と、収容所跡に散乱する人骨の映像から、忘れ去られた死者の魂の叫び声が聞こえてくる。(IS)



【監督のことば】中国の体制側が「右派」と呼ぶものについては、私自身も含め、多くの人が知っていた。しかし、かつて弾圧があったこと、数多くの人々が再教育のために収容所送りにされたことを知っていた私たちも、収容所とそこでの生活の実態については何も知らなかった。粛清の重大さも、数え切れないほどの死者のことも、全国規模に及んだ反右派闘争のことも、何一つ分かっていなかったのだ。

 起きたことを時系列順に再構成する方が、理路整然として理解しやすいようにも思えるが、そうなれば、当事者の証言にこれほどの重きが置かれることはなかっただろう。私にとっては、証言こそが絶対に不可欠だったのだ。こうした人々すべてに共通するものは何か。誰もが恐ろしく、想像し難い体験をしたことである。そしてまたその誰もが、自分は生き延びたという事実を共通して持っている。したがってそれは、極めて個人的な話となる。主に語られるのは、収容所の描写とそこで死んだ人たちについてだが、そこでは何より、生き続けるために一人ひとりが何をしなければならなかったかが明らかにされる。

 このとき私が理解したのは、生者の言葉と死者の沈黙との間のズレこそが『死霊魂』の主題となるということだった。

 収容者とは逆の立場を調査するにあたり、私は一人の守衛と面会することができた。彼は映画の終盤に登場し、そしてまさしく彼を通じて、収容所の写真が発見される。私たちは、党の指導者たちが1950年当時、すでに40歳前後だったことを思い出しておかなければならない。いまやその全員が鬼籍に入っている。映画に彼らが登場しないのはそのためだ。


王兵(ワン・ビン)

1967年、中国・陝西省生まれ。魯迅美術学院で写真を学んだ後、北京電影学院で映画の道に入り、1999年にインディペンデントの映画作家としての活動を始める。2003年に監督デビュー作となる『鉄西区』(YIDFF 2003大賞)を発表し、これまでに11本のドキュメンタリーを制作、その多くは劇場でも一般公開されている。過去10年で成長著しい中国の独立系ドキュメンタリー映画の先頭に立ち、同時代において最も重要な中国人アーティスト・映画作家の一人と目される彼の作品は、批評家による賛辞のみならず、主要な映画祭での国際的な評価や数々の賞を一身に集めている。また、近年に日本で公開された作品に、『鳳鳴フォンミン ― 中国の記憶』(2007、YIDFF 2007大賞)、『三姉妹 ― 雲南の子』(2012)、『収容病棟』(2013)、『苦い銭』(2016)などがある。