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これは君の闘争だ

Your Turn
Espero tua (re)volta

- ブラジル/2019/ポルトガル語/カラー/DCP/93分

監督、脚本:エリザ・カパイ
撮影:エリザ・カパイ、ブルーノ・ミランダ
編集:リザ・カパイ、ユリ・アマラウ
音楽:Décio 7
ナレーション:ルカス・“コカ”・ペンチアド、マルセラ・ジェズス、ナヤラ・スーザ
音響:Confraria de Sons & Charutos
プロデューサー:マリアナ・ジェネスカ
配給:レナート・マンガネロ(Taturana Mobi)

公共交通機関の値上げ反対デモや、公立高校再編案に反対する学校占拠など、活発な政治運動を繰り広げるブラジルの学生たち。その記録映像に、当事者である3人の若者たちがナレーションを重ねていく。若者たちは、その歌うような軽快な語りとともに、学校を、そして街頭を次々と占拠し、政治家たちに自らの主張を認めさせていく。しかし彼らのこうした試みにもかかわらず、警察の対応はより暴力的なものになっていき、ブラジルは極右政権の誕生へと向かっていく。(YH)



【監督のことば】私が生まれた頃、ブラジルはいまだ軍事独裁政権下にあり、全国学生連合は非合法な活動を行っていた。私は政治的迫害と両親の投獄の話を聞いて育った。1988年に民政復帰がなされた後、12歳になった私は、友人とともに学校で初めての学生組合を結成した。

 その年、新しい憲法が起草され、国は奴隷制廃止100周年を申し訳程度に祝っていた。学校では、ブラジルは「人種的民主主義」国家であり、平和的で真心を持つ国民性であると教えられていた。

 そんななか、この国に世界でも指折りの所得格差があり、飢えから銃による殺人に至るまで、あらゆる暴力がはびこっているという事実は、顧みられていなかった。

 過去数年間、非白人の貧困層を包摂しようとする公共政策は、歴史的に周縁に置かれてきた人々が、基本的な教育の権利と、飢えない程度の食物を得ることを認めてきた。それは、民政復帰後に生まれた最初の世代が、国が認める歴史に含まれた誤りを指摘すべく、自身の声を使い始めた時期でもあった。

 2015年、進歩的な公共政策下で教育を受ける最初の世代であるサンパウロの高校生が、州の公立学校への予算削減案に反対する組織を立ち上げた。公教育の質を保つことを求め、200を超える学校が占拠された。そうした占拠活動を、一部の人々は目を輝かせて見守っていた。そこにはたしかに、希望があったのだ。

 このときには、わずか3年後の選挙でジャイール・メシアス・ボルソナーロが当選し、ブラジル初の極右大統領が誕生するなど、考えられもしなかった。その公約には、建物を「侵略」する社会運動家はすべてテロリストとみなすこと、「アカ」――左翼のことだ――を一掃し、国外追放か牢獄送りにすることが含まれている。ボルソナーロは、「マルクス主義の教化」はおろか、歴史や社会に対する批判的な捉え方の一切に終止符を打つことを約束したのである。


エリザ・カパイ

1979年生まれ。独立系のドキュメンタリー映画作家としてさまざまな社会問題を描き、制作から作品での語り口、配給の仕方に至るまで、創作にまつわるさまざまな形態を思考することを重視する。長編第1作『Here Is So Far』(2013)は、7か月にわたるアフリカ横断旅行中に出会った女性たちの話をもとに制作され、第2作『The Tortoise and the Tapir』(2016)では、ブラジルが過去数十年で最悪の干ばつに見舞われるなか、アマゾンの熱帯雨林で建設計画が進む巨大水力発電所の問題に切り込んでいる。本作は2019年のベルリン国際映画祭で初上映、アムネスティ・インターナショナル映画賞と平和映画賞を受賞した。