奄美フィルム ― ミホさん追悼
Amami Film: In Memory of Miho-san-
日本/2008/日本語、英語/カラー/ビデオ/13分
監督、撮影、編集:吉増剛造
英語ナレーション:マリリア
製作会社、配給:オシリス
1982年以来、交友を紡いできた作家・故島尾ミホを貴び偲ぶ、詩人吉増剛造の映画シリーズ「gozoCiné」のひとつの句点。鹿児島から奄美大島、そして加計呂麻島へと船で向かう。ミホと作家である夫についての『ドルチェ』で流れるソクーロフの呟きも巻き込み、ミホが遺した「光の棘」(吉増)を示し得る「色」と「匂い」をカメラで粒さに辿る。同時に詩人の放つドライブの効いたことばが木霊し、皮膜たちがふるえ、狂、美、畏を抽き出す。
【監督のことば】 この作は、2007年の3月に惜しくも、この世を去られた島尾ミホさん(島尾敏雄氏夫人)そうして、先立たれた愛嬢マヤちゃんを、愛惜して綴られた、「映画」というよりも「追慕の詞」、さらにいうならば、亡くなられて初めて書き得た、「恋文」というと当る……love letter Ciné だ。このような形式が可能か、許されるかを、まったく考えにも入れずに、……決心をして(フィルムに、……想いの色も声も)書きこまれている。この「作」の成りたちによって、類のない書物『キセキ』の上梓 (2009年2月)が実現した。そして、この『奄美フィルム』に、入魂の名文を遺した、津田新吾氏が他界されたのが、この夏(2009年の)7月25日、……島尾ミホさんも津田新吾さんも、海の子、島の精だった、……。この「2009年の夏」と、ミホさんの夏、島の夏を、偲ぶようにして、この作の上映を決意された、山形国際ドキュメンタリー映画祭のみなさんに、そして、『奄美フィルム』を目にして下さる方々に、言葉に尽しえぬ“ありがとう、……”を申し上げる。
吉増剛造 |