忘却
Keep the ChangeÜstü Kalsin
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トルコ/2003/トルコ語/カラー、モノクロ/ビデオ/27分
監督、製作:ジェレン・バヤル、ディレキ・イイギュン、エリフ・カラデニズリ、オズゲ・ケンディリジ、サヴァシュ・イルハン
撮影:サヴァシュ・イルハン
編集:ディレキ・イイギュン
提供:アンカラ大学コミュニケーション学部
2000年12月19日トルコ各地の刑務所で「Fタイプ」という独房に抵抗し、2カ月に及ぶ「死のハンスト」を続けていた政治犯たち。「救出作戦」の名目で一斉に治安部隊が武力制圧し、大量の死傷者を出した。煙やざわめきを伝えるニュース中継、「個室の快適さ」を宣伝する刑務所、事件を「憶えていない」街の人々の顔。事件によって記憶障害を抱え、共同生活を送る元政治犯たちの表情と声と記憶の今を留め、事件を能動的に忘れるトルコ社会を刻みこみ、忘却の暴力に抵抗を試みる。
【監督のことば】記憶は、何のためにあるのだろう? 恐らく、誰もが人生に一度は、デジャヴを経験して、「今と同じ瞬間が、前にもあった」と言うことがあるだろう。ドアがゆっくりと開いた時、友達との会話のなかでふとした時に。「前にも同じことがあったけど、いつ、どこでだっけ?」と。奇妙な感じじゃないか? 知っている気がする。いや、絶対知っているはずだと思っても、理由が説明できない。
「これって前にも経験した?」と言ったことがある人は? いや、こう尋ねるほうがいいかもしれない。「『これって前にも経験した?』と、自分に聞いたことがある人は?」。普段私たちは、名前、友達、場所、出来事などを覚えているが、記憶の役割とは何なのだろう? 楽しい日々、友達、誕生日パーティーや様々な恋愛を忘れないため?
記憶が、あなたを未来へ導いてくれるガイドだとしたら、子どもの頃は、いいことも悪いことも、将来経験することの教訓となったはずだ。人生から教訓を学んだなら、生きぬくために何度も挑戦し続けることができる。火に触ればヤケドし、石に当たれば痛く、雨の後は必ず太陽が照ることを学んできたのだから。
このドキュメンタリーのヒーローたちは、もう一度人生を生き直さなければならないが、過去から教訓を学べない。ハンガーストライキを始めてから、政府の武力介入で終結するまでの記憶がないからだ。そして最も重症なのは、事の始終の目撃者であったにもかかわらず、これらを覚えていられないという社会なのだ。
5人の監督を代表して、エリフ・カラデニズリ記す
(左から) エリフ・カラデニズリ 1981年、トラブゾン生まれ。2003年、アンカラ大学卒業。新聞記者として活躍しながら、短編映画『SOAP』のプロデューサー、女性についての短編ドキュメンタリー映画『That's All』の監督、プロデューサー、ナレーターを務める。 サヴァシュ・イルハン 1981年、バルケシル生まれ。2003年、アンカラ大学卒業。カメラマンとして活躍中。 ジェレン・バヤル 1980年、イスタンブール生まれ。2003年、アンカラ大学卒業。写真記者として活躍しながら、『SOAP』『That's All』の監督を務める。 オズゲ・ケンディリジ 1981年、コンヤ生まれ。2003年、アンカラ大学卒業。広告業界で活躍中。『SOAP』のアシスタント・ディレクターを務める。 ディレキ・イイギュン 1981年、アンカラ生まれ。2003年、アンカラ大学卒業。広告およびドキュメンタリー業界でアシスタント・ディレクターとして活躍中。 |