虚構の砦
Fort of the Fabrications-
日本/2004/日本語、英語、他/カラー/ビデオ/32分
監督、脚本、調査、提供:瀧健太郎
ビデオ・メディアを現代のメディア社会とその中心点である都市像を読み解くツールとして活用し、概念化を大胆に試みる。象徴的なメディアの諸相、音や映像のノイズ、多言語で語られるビデオについてのフレーズを使い、章立てで見せる「メディア社会」像が重なることでそこに虚構が立ち上がってくる。そして、声高であることの空虚さを飛び越え、真っ当な〈応え〉として、映像による実践芸術の可能性を正面から訴える意欲作。
【監督のことば】この作品は映画的作品ではなく、またドキュメンタリーでもなく、単なる物語でもなければ、抽象映像でもありません。普段皆さんが目にしている現代社会の様子をある視点を持って捉えようとしている映像作品です。
これはメディア社会・情報社会と呼ばれる現代社会を読み抜き、分析する道具としてビデオ・メディアを用い、その映像のもつ意味と記号の差異から、 現代の都市像を偽りの姿として捉え、その虚構性に迫ろうとする試みなのです。この環境下で政治や科学、哲学と違ったアプローチから、映像表現の実社会に対する可能性を探ります。そこではビデオ・メディア(=「電子映像」と言い換えてもいいでしょう)が何かを知るという試みに始まり、次にその原理によって構成されている諸処のマスメディア・ランドスケープを見据え、そしてそのマスメディア・ランドスケープを通じて、世界の均質化と資本主義的な構造を捉え、それに対して私たちが批判的な視点を持つことができるという可能性を提示します。
このなかでの論理展開とその結論はいささか強引で、観客はその皮肉さと空虚さに不快感を覚えるかもしれません。しかし今日の都市空間や生活環境そのものがビデオ・メディア化(=電子映像化)しているとも言える状況に、私たちがあまりにも無頓着であり、そうした自らの前に立ちはだかるその壁を見つめなおすきっかけとしてこの作品が制作されたのです。
瀧健太郎 1973年、大阪生まれ。武蔵野美術大学大学院映像コース修了。 文化庁派遣芸術家在外研修員(2002)、ポーラ美術振興財団在外研修員(2003)としてドイツ、カールスルーエ造形専科大でメディアアートを学ぶ。映像の制作・執筆活動などを行う一方、早稲田大学川口芸術学校で指導、ビデオアートセンター東京の代表を務める。トランスメディアーレ(1998)、マイクロウェーブ国際メディア・アート・フェスティバル(2001)、リーズ国際映画祭(2001)、ロッテルダム国際映画祭(2002)、フィリップモリス アート アワード(2002)、Ongoing展(2002)などに出品。賞歴にふくいビエンナーレ8メディア・インスタレーション公募部門最優秀賞(2000)、ボーフム国際ビデオフェスティバ ル、オーガナイザー賞(2005)、グラーツ・アートプロジェクト/BIX・メディア・コンペティション最優秀賞、ピーター・クック賞(2005)などがある。 |