白塔
White Tower白塔
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中国/2003/北京語(河南方言)/カラー/ビデオ/83分
監督、撮影、編集、製作:蘇青(スー・チン)、米娜(ミー・ナー)
整音:凡衝(ファン・チョン)
技術合成:卡拉(カー・ラー)
翻訳:陶木(タオ・ムー)、高戈(カオ・クア)
提供:蘇青、米娜
中国でもっともろう者の多いという河南省に住み再婚を考える中年男性・景明。友人のひとりでろう者である20代の王瑞に恋心を寄せている。彼女には母お墨付きの台湾人の婚約者がいるが、めげずに友達付き合いを続ける。周囲の友人たちのアドバイス介入や前妻との復縁話、お見合い話が飛び込んだりしながら、今ひとつ踏込み切れない。恋愛や結婚を巡る群像劇が露呈する、男の優柔不断さと女の見せる行動力は可笑しくも切ない。手話で交わされる活発なみんなのやりとりが、画面一杯に音速を超える躍動感をみなぎらせる。
【監督のことば】『白塔』は、中国で初めてろう者の感情と恋愛を描いたドキュメンタリー映画だ。中国にいる2,057万人のろう者が全世界のろう者の5分の1を占めるが、依然として正しく理解されず、“よそ者”として疎外されている。
中国のろう者のほとんどは社会の周辺に追いやられ、周囲との関係を断たれた世界で暮らしている。その存在は忌避され、無視されている。私たちは彼らの生活を見ることも、声を聞くこともできない。彼らの悲しみや恐怖はまったくといっていいほど知られていない。家族は彼らに辛くあたり、その人生を完全に支配している。ろう者が家族から自立して生活することは、ほぼ不可能だ。子どもたちは、彼らを追いかけ石を投げつける。そして彼らが人前で手話を使って会話をすると、すぐに取り囲まれ、好奇の目にさらされる。その差別は“ろう者”という言葉そのものにまで及び、多くの人は“泥棒”と同じ意味で使う。彼らが受ける最良の扱いといえば、不必要な同情だ。彼らは身内からも社会からも、弱者であり“話す”能力がないと見なされている。
私たちは個人的な友人として、あるろう者のふたりのもっとも私的な時間を記録することができた。一般の人々に彼らの世界をよりよく理解する機会を与えたかったのだ。このドキュメンタリーには、余分な説明は加えず、彼らの物語の進展に沿って編集した。手で話そうと口で話そうと、このドキュメンタリーではすべてのコミュニケーション手段を平等に扱っている。強調したいのは、私たちはみな人間として平等であり、同じ人生を営み、同じ感情を持っているということだ。
このドキュメンタリーを完成させるのは、とても大変だった。この映画によって、人々がろう者をよりよく理解し、彼らの世界に入っていく助けになることを、そしてできれば、手話も学びとれるようにと私たちは心から願っている。
蘇青(スー・チン) 1969年、内モンゴル生まれ。現在はインディペンデントの映画作家として北京に在住。1990年に鉄道設計の学位を取得し、1995年から1998年まで北京の広告会社でアート・クリエイターと編集者を務める。1998年から2002年まで、北京のテレビ映画製作会社で監督業をし『The Melody of Striver』を製作。また独立後には、本作と『Old Tang』『The Heirs of the Deaf』を製作した。本作は2004年第15回マルセイユ国際ドキュメンタリー映画祭で最優秀初監督作品賞とシネマ・リサーチ・グループ特別賞を受賞した。 米娜(ミー・ナー) 1973年、重慶生まれ。北京服装学院でアート・マネジメントの学位を取得。北京の広告会社でファッション・デザイナー、コンサルタントとして働き、後にアート・クリエイターと顧客担当責任者を務める。本作を製作後、2004年に北京の中央美術学院でアート・マネジメントのMBAを取得。2004年中国国際画廊博覧会のドキュメンタリーを撮影した。 |