ガーデン
GardenGan
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イスラエル/2003/ヘブライ語、アラビア語/カラー/
ビデオ/85分
監督、製作:ルーシー・シャツ、アディ・バラシュ
編集:ヤナス・ビレシュコフ・ヤンセン
音楽:ウリ・フロスト 音響:アヴィヴ・アルデマ
配給:デッカート・ディストリビューション
テルアヴィヴの街の一角、「エレクトリシティ・ガーデン」で売春するティーン・エイジャーのニノとドゥドゥ、そして彼らと友人のように接する監督。廃屋で生活する運命共同体の個性溢れる男性/女性たちもまたカメラに心を開いていく。暴力や麻薬中毒、強制送還されるかもしれない恐怖と施設での生活、アラブ系であることへの蔑視。ふたりは自分たちを取り巻く檻の現実を縦横無尽に翔る。痛いほど優しいふたりの友情と将来を希求する姿がカメラと夜に吸い込まれていく。
【監督のことば】『ガーデン』は製作するのに3年かかり、企画にはもっと時間がかかっている。学生の頃、ガーデンを通るたびに、そこで働く10代の子たちから目をそらしつつも、なにかしなければと思っていた。映画を作るために初めてガーデンに行った時、これは長くつらい旅になると悟った。まず最初に決めたことは、少年たちのためにも、映画作家である私たちのためにも、この映画には何らかの希望が存在しなければならないということだった。
ニノとドゥドゥに会って、ふたりの友情の深さを理解するにつれ、希望がそこにあると感じた。ふたりはテルアヴィヴのダウンタウンにある「エレクトリシティ・ガーデン」で体を売っている。この映画は1年かけて彼らの生活を追い、彼らの複雑な生活ぶりや、現実が姿を変え、友情が深まっていく様子を明らかにしていく。ふたりとも家族に虐待され家出をし、生活のために売春している。ニノとドゥドゥはサバイバーであり、その知性、ウィット、強い意志から、ガーデンで売春する若者の間では“エリート”的な存在だ。彼らは息苦しいガーデンの支配から逃れたいと口にするが、手っ取り早く手に入る現金には中毒性がある。そのために、心もとない自由ときわめて不安定な生活のサイクルから、抜け出すことができない。
ニノとドゥドゥはテルアヴィヴの街を舞台にした、サバイバルと友情の旅に私たちを連れていく。自然体でいようともがく彼らが、自分たちのおかれた状況を理解していく。警察に抗い、殴られ、留置所に放り込まれ、客と交渉し、イスラエルの“システム”のなかでうまくやる。そんな日々でも、自分自身を受け入れよう、自らの運命を変えようとする。この希有な友情の物語は、10代の売春の過酷な現実を露にする一方で、イスラエルに住むパレスティナ人、アラブ系イスラエル人、移民たちの複雑さをも教えてくれる。
ルーシー・シャツ アディ・バラシュ 共に受賞歴のあるドキュメンタリー映像作家。妥協のない映画の手法で、力強く刺激的なドキュメンタリーを製作している。本作は2004年セビリア映画祭で特別賞、2005年トリノ国際ゲイ&レズビアン映画祭でベスト・ドキュメンタリー賞を受賞した他、多くの国際映画祭で上映されている。 |