蒋(チアン)氏の家
Last House Standing房东蔣先生
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中国/2004/北京語/カラー、モノクロ/ビデオ/54分
監督:干超(ガン・チャオ)、梁子(リャン・ツ)
撮影:梁子 撮影助手:朱騫(チュー・チエン)、干超
編集:干超 整音:沈顔村(シェン・ハンツン)
美術:余蒙靚(ユィ・モンリアン)
エグゼクティブ・プロデューサー:袁曄珉(ユェン・イェミン)
製作:王小龍(ワン・シアオロン)
製作会社、提供:上海テレビ局
1930年代から上海を見続けてきた家とそこに独りで住む上海ダンディーな蒋(チアン)氏。再開発の一環で、まもなく壊されるこの家に間借りすることになった女性からの猛烈な追求に、寡黙な彼が口を開き、独自の哲学と個人史が紐解かれる。戦中の上海、文化大革命の煽り、そして現在と中国の歴史に翻弄された彼の人生から滲み出す哀愁が、周囲の情景や対照的なふたりのやりとりと相まって、作品に絶妙な陰影を漂わせる。
【監督のことば】『蒋氏の家』の製作と撮影には、2年の歳月を要した。資金面での制約があったため、難しい作業だったが、撮影の初日から私たちの心は、蒋氏と彼の家の物語のとりこになってしまった。そして、自分たちはある回顧録を撮影しているのだと気がついた。たとえそれが、名もない人物の歴史であったとしても。
この老人と彼の家がくぐり抜けてきたすべての困難は、その当時の中国の辛い歴史と密接に結びついていた。この古い邸宅は、1930年代上海のデカダンス、内戦後の解放、そして文化大革命の嵐の証人だ。それ以降も、現代の上海で起こっている急激な変化を引き続き目撃している。この家は、単なる無機的な建造物ではなく、歴史、家族と感情の生きた混合物であり、蒋氏は60年という歳月のなかで、その重荷をひとりで受けとめてきた。彼の歴史は、中国社会の歴史でもある。映画のなかの彼のため息や思い出の一つひとつが、私たち自身の人生や過去についての思いを表している。
この映画が上海で放映されると、前例のない熱狂で迎えられた。もしかしたらそれは、この映画が真実を語っていたからかもしれない。あるいは人々が長い間、圧し殺してきた感情を、解き放つ助けになったからかもしれない。隣国である日本でも、このドキュメンタリーのメッセージすべてを理解してくれるだろうと、私たちは信じている――これは誰かの物語であると同時に、私たち自身の物語なのだ。この作品でも問われていたように、歴史を逃れて生きることなどできるのだろうか?
干超(ガン・チャオ) 2000年、上海の復旦大学の中国語中国文学学科を卒業。その後はブリストル大学で学び、2年後にテレビ学の修士号を取得する。同年『More, or One』を監督。その他の作品歴に『Entrance to Solitude』(2003)、『Come and Dance, Burka』などがある。また、上海テレビ局のドキュメンタリー・チャンネルで、監督、編集、プロデューサーを務めている。 梁子(リャン・ツ) 1980年代前半、中国の青海地区とチベットで、写真家、レポーターとして働く。1990年に雑誌『Jingxiu』のチーフ・フォトグラファーとなり、1999年には『戦場からニイハオ!』(光文社)を出版した。2000年から2003年にかけて、アフリカのレソト、シエラレオネ、エリトリアで1年3カ月過ごし、『Africa Is Right Here』(2000)、『Go for Africa』(2001)、『Sea and Sand』(2003)を撮影した。 |