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インターナショナル・コンペティション

神聖なる真実の儀式

Basal Banar--Sacred Ritual of Truth

- フィリピン・パラワン/2002/パラワン語、フィリピン語/カラー/16mm/120分

監督、脚本、ナレーター:アオレイオス・ソリト
撮影:レジベン・ロマナ(マタング・アラウ)
編集:レジベン・ロマナ、アオレイオス・ソリト
録音、微速度撮影アニメーション、プロダクション・マネージメント:エレン・ラモス(マヌンガ)
音楽:南パラワン先住民音楽
製作会社:国立文化芸術委員会(NCCA)、異文化開発フィリピン協会(PAFID)
提供:アオレイオス・ソリト 配給:異文化開発フィリピン協会(PAFID)
Philippine Association for Inter-Cultural Development
#71 Malakas St., Diliman, Quezon City PHILIPPINES
Phone: 63-2-9286267 Fax: 63-2-9274580
E-mail: kanakanbalintagos@yahoo.com

YIDFF '99アジア千波万波『部族へ帰れ』(ハウィ・セヴェリノ監督)でその生き方が描かれたフィリピン先住民族の血を引く実験映像作家アオレイオス・ソリト。彼は故郷のパラワン島へ帰って神聖なる儀式や日常生活をカメラにおさめる。多国籍企業などの介入により生活が破壊されていく様子とそれへの怒り。打楽器の響きと映像のリズムが渾然一体となって見るものを独特の映画世界に引き込んでいく。



【監督のことば】この映画は、私が自分の民族であるパラワンに回帰していく7年間の再発見の旅の成果である。当初は雨が降っても濡れないドゥアクランボという呪文を覚えることが目的だったが、なんと、その呪文は既に忘れられてしまっていたのだ。その代わりに、もはや数が少なくなったバリアンというシャーマンから聖なる儀式バサルで踊るタルックという踊りを学んだ。そして、祖先たちにとって宇宙は7つの天上と7つの天下として理解されていることを知った。皿を次々に上に重ねるように、どの皿も互いに異なっていて、それでいてひとつである。

 映画の編集をしている時、セルロイドフィルムの中のパラワンの世界観、先住民族の声を見つけようとした。マニラの近代的な都市で大きくなった私たちは、スペインのキリスト教保守主義やハリウッドとアメリカの植民地的な意識によって心が歪められてしまっている。

 私たちは自分たちが誰であったかを忘れてしまった。

 『神聖なる真実の儀式』は祖先の言葉が最もよく表してくれる。

 この映画は、物語歌のトゥルトルのようであり……世にも稀で神秘的なルンパット・パガールの花の香気のようであり、その花びらは島で最も美しい女性パラマニスによってディワタ(森と海の精霊)を招くために使われる……強くて丈夫なゴザを作るために使われるビダイのようでもあり……

 それはバサル、神聖であり真実。

 私は幸せだ。祖先の霊の力に感謝をしたい。雨が降っても濡れない呪文がなくなったとしても、何かは残り、受け継がれ、映画を通じて火をともしつづけることができるのだから。


- アオレイオス・ソリト

1969年、マニラ生まれ。演劇人、映画監督であり、先住民族の権利回復運動に携わる。南パラワンの先住民族パラワンの出身。先祖代々受け継がれてきた土地以外で生まれた最初の先住民族のひとり。国立フィリピン大学で演劇を専攻し、モウェルファンド映画学校で映画を学ぶ。作品歴に、実験アニメーションで国際映画祭や世界中の美術展で上映された『Ang Maikling Buhay ng Apoy, Act 2, Scene 2: Suring at ang Kuk-ok』(1995)、ミュージック・ビデオの『Ang Huling El-Bimbo』(1996) はフィリピンでは初めてのMTV Asia Viewers' Choice Awardの最優秀賞を受賞した。短編映画『Impeng Negro』(1998)はニューヨークのグッゲンハイム美術館で上映された。また、南パラワンの長老のシャーマンを描いたビデオ・ドキュメンタリー『U' po』(1999) などがある。


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