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インターナショナル・コンペティション

純粋なるもの

Purity

- イスラエル/2002/ヘブライ語、英語/カラー/ビデオ/63分

監督、脚本:アナット・ズリア
撮影:ヌリット・アヴィヴ、ニリ・アズラン、シリ・バールオン
編集:エラ・ラピド
音楽:ヨナタン・バール・ギオラ
製作:アミット・ベリヤー
製作会社、提供:アミトス・フィルム
配給:エフ・フォー・フィルム
F For Film
16, rue de l'ancienne forge, 27120 Fontaine-sous-Jouy FRANCE
Phone: 33-2-32-26-25-39 Fax: 33-2-32-36-86-49
E-mail: seguy@f-for-film.com URL: www.f-for-film.com

ユダヤ教徒の結婚と性について考察。家族で聖なる浄めの儀式に出席する様子、男性社会における女性の葛藤、そして戒律による夫婦生活や性のあり方。カメラに向かい率直な意見を述べる女性たちは、二千年来のユダヤ教の戒律のタブーに挑戦する。女性たちの表情の豊かさ、静謐なる水のイメージが心に残る。



【監督のことば】この映画で私は、古来ユダヤ人がタブーとする女性の浄と不浄を規定する多くの厳格な戒律の世界に足を踏みいれた。これらの戒律は、信心深い女性たちのセクシュアリティという、生活の最も私的な部分をコントロールし、形作っている。戒律は、女性の体、月経周期やセクシュアリティ、いずれもとても繊細かつ痛々しくもある現実を扱っている。

 浄めの儀式は2000年以上も前から続けられ、女性の月経周期時に執り行われる。不浄の状態は月経の間とその後7日間にも及び、女性たちは浄めの儀式が済むまで、夫との身体的な接触が禁じられる。ミクヴェ(儀式用の浴槽)の水に身を浸すことのみで、浄められるのだ。

 このとても古めかしい浄めの戒律は、敬虔なユダヤ教徒の夫婦間で、いまだ守られ続けている。しかし今の時代においては、これらの古い戒律は、厳格に守る者たちをも傷つけかねない。

 『純粋なるもの』は、私自身の生活から切り離すことができない、自分の文化そのものである世界を、アウトサイダーとして捉えようと試みた私的な映画だ。この作品の中では伝統と浄めの戒律を、手際よく女性性を抑圧する巧妙な罠として描く。

 また、この映画は、友人でもある3人の女性の物語である。映画の中で、浄めの儀式を受けるのは私でも、引き裂かれるような葛藤を体現するのは、私の身近にいる女性たちだ。彼女たちの考え方や気持ちと衝突を起こし続ける、古い戒律という自社会の伝統に、彼女たちは従わざるをえない。ひとりひとりが浄めの儀式を深く経験し、その代償を払う。彼女たちの誰ひとりとして、この罠から抜け出すことができないのだ。

 この映画で問題の解決法は示されない。家父長制的な戒律と女性たちの声の間の葛藤は深まるばかりだ。


- アナット・ズリア

イスラエルのラマト・ハシャロン・アートカレッジ、マーレ・スクール・オブ・コミュニケーションズを卒業。数々の雑誌に芸術とユダヤ教について執筆活動をしながら、アーティストとしても活動。作品はイスラエル内外のギャラリーで展示され注目をあびている。ドキュメンタリー作品のエディターとしてフリーランスで活躍。マーレ・スクール・オブ・コミュニケーションズで映画監督の教鞭をとる。監督作品である『Klachi in the Holyland』(1999)はケシェット/チャンネル2で大賞を受賞。本作は2002年のエルサレム国際映画祭、ジューイッシュ・エクスペリエンス部門で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。



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