炎のジプシーバンド
IAG BARI--Brass on Fire-
ドイツ/2002/ドイツ語、ルーマニア語/カラー/35mm(1:1.66)/98分
監督、脚本、製作:ラルフ・マルシャレック
撮影:ラース・バーテル、マリオ・クーラ
編集:ラルフ・マルシャレック、アンジェラ・ウェント、ヨアヒム・チヨノ
録音:マーク・フォン・シテュアラー、マーク・エルスナー
音楽:ファンファーレ・チョカリーア
製作会社:ウン・ヴェルト・フィルム・プロダクション
配給:HS・メディア・コンサルト
HS Media Consult
Wasenstrasse 29, Dettenhausen 72135 GERMANY
Phone / Fax: 49-7157-620008 E-mail: heide.schramm@freenet.de
少年が湖でホルンを拾い上げるシーンからこの物語は始まる。ルーマニアの小さな村で生まれたジプシー・ブラスバンド「ファンファーレ・チョカリーア」が、やがて世界中を席巻し多くのファンを生んでいく。ジプシー・ブラスバンドの中でも世界最速音と言われる彼らの公演の旅を詩情豊かな映像で描く音楽ドキュメンタリー。東京公演の愉快な映像もあり。
【監督のことば】17歳の時、『ジプシーは空にきえる』というロシア映画を観たのが、ジプシー文化との運命的な出会いとなった。この情熱と野性味に溢れ、魂を揺さぶる音楽に彩られたメロドラマ調のラブストーリーを観て、ジプシー特有の精神世界に根ざした、彼らの人生にはせる情感に深い感動をおぼえた私は、手当たり次第にジプシー音楽のレコードを集めはじめ、ジプシー関係の本を読みあさり、親しい友人とジプシーの祝祭行事を祝ったりもした。早い話が、私はジプシーの文化に恋してしまったのである。
私はかなり夢見がちなティーンエイジャーだったと言わねばなるまい。
その熱い思いはいつまでも消えることはなかったので、いつか本物のジプシーたちに会える日が来ると確信してはいたが、その方法はまだ思いつかなかった。
30年が過ぎ、映画製作を始めてからずい分たった頃、友人たちにあるアイディアがひらめいた。俗っぽいレストランでテーブルに回ってくる、いかにもな代物とは似ても似つかぬ、本物のジプシー音楽を求めて、ルーマニアをさまよってみないか? それを聞いたとたん心の奥底から私の初恋がよみがえってきた。変わり者の友人一行に加わることにして、小さなビデオカメラをかついで出かけると、ほどなくルーマニア東部、モルドヴァの村々に今もジプシー文化が息づいていることが分かった。それが本作の冒頭にあたるのだが、この発見が後にどんな幸運な結末につながってゆくのか、思わず身体が踊りだし、人を酔わせるジプシー・ブラスバンドの演奏が、どれほど全世界を熱狂させることになるのか、当時の私たちには想像もつかなかったのである。ただ分かっていたのは、我々の夢が実現しつつあること、そしてこの出会いによって我々の人生は変わるであろうということだけだった。
というわけで、この映画では3つのラブストーリーが展開する。まず情熱に捧げる愛、それからドイツの男たちとジプシーの娘たちをつなぐ愛、最後に世界中の人々の、心を打つ音楽に対する狂おしいまでの愛。
それが異文化交流の原点ともいうべきものであり、今この世界が必要としているものではないだろうか。
ラルフ・マルシャレック 1953年、ドイツのワイマールに生まれる。1980年、イェーナ大学で心理学修士号取得。アマチュアとして、実験映画、ドキュメンタリー、短編などを製作する。1981-87年、助監督を務める。1987年より、映画監督として活躍。1991年、自主製作会社ウン・ヴェルト・フィルム・プロダクションを共同設立。1992年、チューリンゲン映画基金の共同設立者および会長。 |
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