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不安定な対象 2

The Unstable Object II

アメリカ/2022/ダイアローグなし/カラー/DCP/204分

- 監督、脚本、編集、録音:ダニエル・アイゼンバーグ
撮影:インゴ・クラティシュ
録音:マティアス・ライマン
提供:ダニエル・アイゼンバーグ

ドイツ ドゥーダシュタットにあるオットーボック社の義肢製造工場、南フランス ミヨーにあるメゾン・ファーブルの高級革手袋縫製アトリエ、トルコ イスタンブールとデュズジェにあるレアルコム社のジーンズ工場という3つの工場での製造工程を「持続的観察」の手法によって徹底的に記録する実験的ドキュメンタリー。消え去る運命にある手仕事の現場に密着した「視覚的思考」の試みでもある、ナレーションも字幕も排した労働のイメージの時間は、私たちを見ることの陶酔へと誘いながら、手による思考と分析の未来への問いかけともなっている。(AK)



【監督のことば】本作は2011年の『不安定な対象』で最初に取り上げた諸問題の延長線上にあり、その時は視覚、触覚、聴覚といった身体の感覚のうちのひとつをそれぞれ明白に隔絶した3つの工場が選ばれていた。今回もやはり3つの工場が選ばれているが、その構造の原理は、生産現場での集団と個の構築において根本的に異なる三通りのやりかたを辿ることにある。私としては、そこでの経験を過剰に規定することにも、教育的に振る舞うことにも興味はない。より単純な、非物語的で非テキスト的な形式に回帰することは、労働の映像から理解されるものを押し広げる。時間や空間との関わりを留めるがゆえに存在論的な複雑さがそのまま残されているそれらの映像は、分析や判断を要求する。このプロジェクトにとって、なすべきことは依然として単純なままだ。すなわち、労働者=生産者として働く最後の世代と早晩なるだろうあれらの人々のために、意味深い生産現場を見つけ、それらの経験を、時間や空間、社会空間や来る日も来る日も必要となる注意の種類をどうにかして伝える映像に変換することである。


- ダニエル・アイゼンバーグ

ドキュメンタリーと実験的メディアの境界で40年以上にわたり制作活動を続ける。これまでにニューヨーク近代美術館、ポンピドゥー・センター、パシフィック・フィルム・アーカイブ、ハーシュホーン美術館、米国映像博物館、ブリュッセル映画博物館、デ・ユニ、キノ・アーセナルで個展が開かれたほか、ベルリン、シドニー、ロンドン、エルサレム、ニューヨークの各映画祭、ホイットニー・ビエンナーレでもその作品が上映されている。本作はマルセイユ国際映画祭でグランプリとジョルジュ・ド・ボールガール国際賞を受賞、さらにニューヨーク映画祭、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭、DMZ国際ドキュメンタリー映画祭、Beldocs(ベオグラード)、メキシコ国立自治大学国際映画祭でも上映された。現在、シカゴ美術研究所教授。ベルリン・フンボルト大学国際研究センター「re:work」プログラムでもアソシエイト・フェローを務めている。