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ニッツ・アイランド

Knit's Island

フランス/2023/英語、フランス語/カラー/DCP/98分

- 監督、脚本、撮影:エキエム・バルビエ、ギレム・コース、カンタン・レルグアルク
編集:ニコラ・バンシロン
音響、整音:マチュー・ファルナリエ
音楽:エキエム・バルビエ、ギレム・コース、マルク・シフェール
製作:ボリス・ガラヴィニ
製作会社:Les Films Invisibles
配給:Square Eyes

ゾンビで溢れた世界でサバイブせねばならないオンライン・ゲーム『DayZ』。その仮想空間を利用し、匿名のユーザーたちが交流しているコミュニティの内側にフランスの映画クルーが潜入、963時間の取材を敢行する。ゲーム内で暴虐を尽くす集団、博愛主義者のグループ、単独行動を続けるユーザーらと出会い、それぞれがプレイに没入してきた理由がインタビューで語られていく。画面のアバターに重なる声、マイクがひろう生活音が、オフラインにいる生身の存在を伝える。やがて映画クルーは、ゲーム空間の限界を探索する旅へ向かう。(TS)



【監督のことば】数年前から私たちは、ドキュメンタリー作品制作の場としてのオンラインゲームやネット空間に関心を抱いている。その過程でとりわけ注目するようになったのが「サンドボックス型」と呼ばれるゲーム群――すなわち、オープンワールドであらかじめ決まった物語がなく、プレーヤーがその場で自由に自分なりのストーリーや法規や萌芽的社会を発明してゆくネット上の世界である。2018年に制作した中編『Marlowe Drive』は『グランド・セフト・オートV』に集う若者たちの想像力や消費願望に関わるものだったが、その後私たちはチェコのゾンビサバイバルゲーム『DayZ』上で成長しつつあったあるコミュニティに2年以上ものあいだ入り浸り、仮想空間で時間を過ごす人びとをそうさせるのが何かを探ろうとした。本作『ニッツ・アイランド』は、終末世界の空気に覆われた環境でプレーヤーたちが生き延びようとするこのゲームへの一人称的な没入である。この映画で私たちは、そうした空間の踏破へと誘われ、ある没落した国家の痕跡をその背景に感じさせる広大な田舎の風景へ分け入っていく。まるでそこがさまざまな陣営のゲリラ兵が潜む森であるかのように、コミュニケーションの相手となるプレーヤーを求めてこの領域を駆けずり回り、インタビュー形式での私たちとの対話に応じ、またこちらの提示する状況に合わせて「プレイ」してくれる人たちを探していくのである。彼ら協力者はそこで、画面の中と外、つまりは『DayZ』の仮想空間とIRL(「現実世界で」を意味するネットスラング)の生活空間での自身の経験に触れながら、少しずつ打ち明け話や自己開示をすることになる。


- カンタン・レルグアルク(左)
エキエム・バルビエ
(中央)
ギレム・コース
(右)

モンペリエ美術学校で出会った3人は2016年に、オンライン・ビデオゲームにおける現実との関係性を調査する研究グループを結成。翌年には、ゲーム「グランド・セフト・オートV」(GTA5)を舞台にした初のドキュメンタリー探求に挑戦し、中編映画『Marlowe Drive』(2017)を完成させると、ボルドー国際インディペンデント映画祭やブリィブ国際中編映画祭といったさまざまな映画祭のほか、カルティエ財団現代美術館やサンキャトル・パリなどのアート・スペースで上映された。2018年、彼らは初の長編ドキュメンタリー『ニッツ・アイランド』の執筆を開始。これは、完全にオンラインのゲーム空間内でのみ撮影された作品である。