その他企画
特別招待作品
アジアの若手を啓発し続けた佐藤真監督の『阿賀の記憶』、台湾の白色テロを生き抜いた女性の半生を描く『春天 ― 許金玉の物語』、2008年公開の話題作『靖国 YASUKUNI』、そして類なき気鋭作家、原將人監督の8mm3面マルチライブ『マテリアル&メモリーズ』は必見。若手ウルポン・ラクササド監督による『稲作ユートピア』はタイ北部の小規模農家をフィクション交えた独自のスタイルで描く。亀井文夫監督のカメラマン故菊地周氏の長期企画を完成させた『こつなぎ ― 山を巡る百年物語』は東北の寒村で山の入会権をめぐる裁判闘争を追う。茅葺き家屋の山村で、映画祭直後に開催される「日中映画道場」を記念して小川プロの『ニッポン国古屋敷村』。土本典昭監督の『みなまた日記』で映画祭を終幕する。
会場:山形市中央公民館6F、山形市民会館小ホール、ソラリス1
外部リンク 『こつなぎ』上映実行委員会 Webサイト
YIDFFネットワーク企画上映
YIDFFネットワークは、1989年の第1回山形国際ドキュメンタリー映画祭開催にあたり、小川紳介監督の呼びかけで集まった有志によるボランティア・グループです。それ以来継続的に様々な活動を続け、毎回映画祭と協力しながら独自の視点による企画上映を行っています。
会場:山形市民会館大ホール、フォーラム5
- 『湯の里ひじおり ― 学校のある最後の1年』
- 監督:渡辺智史/日本/2009/ビデオ/76分 ●14日 CL
外部リンク 『湯の里ひじおり』を支援する会 blogサイト - 『見るということ』
- 監督:加藤到、狩野志歩、前田真二郎、稲垣佳奈子、奥野邦利、大木裕之/日本/2009/ビデオ/95分 ●13日 F5
今年はセミナーとシンポジウムが満載2007年に続き、日本映画の国際共同製作を推進するJ-Pitch主催のセミナーが3回。ドキュメンタリーの国際展開を考える上でタイムリーな諸テーマについてゲストに講演をしていただく。「映画を訳す」(阿部マーク・ノーネス氏)、「被写体をめぐる法制と慣習」(カルメン・コボス氏、山上徹二郎氏)、「それでも合作はおもしろい」(小谷亮太氏)。さらにアジア・ネットワーク・オブ・ドキュメンタリー(AND)による「映像のマスタークラス」もお楽しみに。他にも各プログラムの監督たちを迎えて、あちこちで〈世界とつながる〉トークイベントが目白押し! |
J-Pitchセミナー「ドキュメンタリー、国際展開の諸問題」
協力:山形国際ドキュメンタリー映画祭
日本映画の国際共同製作を推進するJ-Pitch事務局が山形国際ドキュメンタリー映画祭2009でセミナーを主催します。ドキュメンタリーの国際展開を考える上でタイムリーな諸テーマについてゲストが講演。今後、ドキュメンタリー映画を通した世界への発信を実現するための可能性を提案します。
会場:山形市民会館小ホール 参加費:無料
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●9日[金]10:00-12:00
「それでも合作はおもしろい」 - 小谷亮太(NHKプロデューサー)
資金を提供して「国際共同制作」と称していた時代は今や昔。今回の山形映画祭では小谷氏のプロデュースした合作ドキュメンタリーが3本も上映されるが、年間10本ものドキュメンタリー作品を世に出すために世界各地のドキュメンタリー・ピッチに参加し企画を共同開発する。インターナショナル・コンペティションで上映される『ナオキ』(監督:ショーン・マカリスター)を例に、日本の企画が外国の監督を迎えて共同制作をした苦労と、それでもやりたいと思う、国を越えてのコラボレーションの喜びについて語る。(関連作品『ナオキ』『モンキーマンの街角』『ハルビン螺旋階段』)
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●11日[日]10:00-12:00
「映画を訳す」 - 阿部マーク・ノーネス(ミシガン大学教授)
自国外で紹介されて、初めて作品が承認されたと感じる映画作家は少なくない。このような越境配給や国際共同製作は、通訳者・翻訳者の存在があって初めて可能になる。通訳や字幕翻訳、吹き替えを通して、訳者は非公認の共同作者――影の監督――となる。しかし訳者の決定的で創造的なその仕事が、作品に多大な影響を及ぼしていることは、多くの場合無視されている(報酬も不十分である)。気鋭の日本映画研究者が、国際共同製作、通訳、字幕作りについて歴史的な例を引きながら、映画をめぐる言語の移し変えの機微を語る。強烈な新潟弁をどのように(暴力的に)訳すのか、『阿賀の記憶』(佐藤真監督)の大胆な英語字幕がひとつのケーススタディとなる。(関連作品『阿賀の記憶』●8日 A6)
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●13日[火]10:00-12:00
「被写体をめぐる法制と慣習」 - カルメン・コボス(プロデューサー、コボス・フィルムズ)&山上徹二郎(プロデューサー、シグロ)
近年、日本の制作者が外国で撮影する、あるいはその逆の例が数多く見られる。撮影の現場における被写体との関係性の結び方、肖像権のありようや撮影許可の慣例は国や文化によってどのように異なるだろう。誠意をもって関係性を築くことが前提であっても、どのような誤解や行き違いがありうるのか、国際的な撮影と共同製作の経験豊富なヨーロッパと日本のプロデューサーに実例に基づいて聞く。近年の話題作としては、上映に関して論争が沸き起こった『靖国YASUKUNI』(李纓監督)が参考となる。(関連作品『靖国 YASUKUNI』●13日 S1)
ANDプレゼンツ:撮影とドキュメンタリー
YIDFF 2007から始まったマスタークラス・シリーズ。撮影から仕上げまでひとりでビデオ制作できることがインディペンデントなら普通となり、個人映像だからこそ描ける世界が広がる。しかし集団で作らざるを得なかった時代と比べ、ひとりで撮影現場に立ち、パソコンに向かう現代のドキュメンタリー制作者は孤独だ。監督と交流する一番近い外部者である“先輩”技術スタッフの話を聞くシリーズ。今回は撮影に焦点をあてる。
会場:フォーラム3
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●13日[火]13:30-15:30
撮影のマスタークラス 1
- 講師:ヌリット・アヴィヴ(撮影監督、映像作家)
聞き手:小山内照太郎(コーディネーター)
フランスで女性として最初の劇映画撮影監督として、アニエス・ヴァルダ、アモス・ギタイ、ルネ・アリオ、ジャック・ドワイヨンら監督のもと、フィクションやドキュメンタリー映画を百本以上撮影してきた。チームで仕事をすることは「音楽を一緒に奏でるようです。私はひとりで映画を作ることはありません。」と言う。ヴァルダの『ダゲール街の人々』、ルネ・フェレの『Histoire de Paul』(ジャン・ヴィゴ賞 1974)、ルネ・アリオの『Moi, Pierre Rivière . . . 』、ギタイの『フィールド・ダイアリー』、自身の5分の短編『Allenby, passage』の映像を参照しながら、撮影監督としてのキャリアの喜びについて語る。
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●13日[火]16:30-18:30
撮影のマスタークラス 2
- 講師:大津幸四郎(撮影)
岩波映画製作所を経て、日本を代表するドキュメンタリー作家の小川紳介、土本典昭、佐藤真らと作品作りを共にし、今年のYIDFFでは藤原敏文の『フェンス』、アレクサンドル・ソクーロフの『ドルチェ ― 優しく』が上映される大津幸四郎さんは、レンズの向こうから日本ドキュメンタリーの歩みを作ってきた映画キャメラマンと言っても過言はないだろう。スタッフという「複数の目を通して練り上げられていく」映画の密度と、「撮る側がいつも試されている」ドキュメンタリー作りの重さについて、デジタル世代の作り手たちへのメッセージを語る。『水俣 ― 患者さんとその世界』、『不知火海』、『花子』の映像を見ながら、撮影とドキュメンタリーを考える。