インターナショナル・コンペティション審査員と審査員作品
山形国際ドキュメンタリー映画祭2005のインターナショナルコンペティション作品15本の中からロバート&フランシス・フラハティ賞などを決める5名の審査員と、映画祭期間中に上映される審査員作品をご紹介します。
●ドミニック・オーヴレイ(フランス)
マルグリット・デュラスと出会い、デュラスの『バクステル、ヴェラ・バクステル』(1976)、『トラック』(1977)などの編集を担当。以後、フィリップ・ガレル、ヴィム・ヴェンダース、クレール・ドゥニ、ペドロ・コスタなどの作品の編集を手掛ける。2002年、デュラスのポートレート『マルグリット・デュラス、あるがままの彼女』を監督。
- 上映作品:
マルグリット・デュラス、あるがままの彼女
- フランス/2002/フランス語/ビデオ/61分
このポートレートはマルグリット・デュラス、あるがままの彼女に近づくために作りました。よく笑い、真面目で、誠実で、挑発的で、注意深く、きっぱりしていて、しかしなによりも若々しく、自由な彼女に近づくために。(D・オーヴレイ)
●スー・フレドリック(アメリカ)
1978年から映画制作を始め、これまでにプロデュース、監督をした16ミリ映画とビデオ作品は13本ある。『シンク・オア・スイム』(1990)、『ルールズ・オブ・ザ・ロード』(1993)、『ハイド・アンド・シーク』(1996)、『回復の見込み』(2002)、など。メルボルン映画祭グランプリ他、LAゲイ&レズビアン映画祭など受賞作多数。日本には、1998年の東京国際レズビアン・アンド・ゲイ映画祭に来日。現在はプリンストン大学で映画・ビデオ製作を教える。
- 上映作品:
シンク・オア・スイム
- アメリカ/1990/英語/16mm/48分
26の短いストーリーがつながって、父性、家族関係、仕事や遊びに対する少女の考えのもととなった子ども時代の出来事を描く。諸要素が絡み合い、複雑かつ感情を激しく揺さぶる作品。
回復の見込み
- アメリカ/2002/英語/16mm/65分
6回目の手術と目下進行中のホルモンのアンバランスに直面しつつ、監督はカメラを一人の気難しい患者――彼女自身――に向けて、より幸せで、より健康な暮らしを送れる可能性を分析する。
●賈樟柯(ジャ・ジャンクー)(中国)
1993年に北京電影学院に入学し、『小山の帰郷』、『一瞬の夢』を監督。『一瞬の夢』、それに続く『プラットホーム』(2000)は、ベルリン国際映画祭をはじめ、海外の多くの映画祭で上映、受賞し国際的に大きな注目を集める。彼の「イン・パブリック」が1編に入っている、チョンジュ国際映画祭の企画により製作した『三人三色』(2001)は、YIDFF 2001にて上映。新作『世界』も大きな話題となっている。
- 上映作品:
世界
- 日本、フランス、中国/2004/35mm/133分
北京郊外にある「世界公園」はエッフェル塔やピラミッドなど世界各地の観光モニュメントのレプリカが立ち並ぶテーマパーク。ダンサーとして働くタオと警備主任として働く恋人のタイシェンの関係はいまや微妙。憧れ、不安、嫉妬、失望、そしてささやかな喜び。様々な思いを抱えながら、ひたむきに踊り続けるタオ。北京の街も2008年のオリンピック開催を前に日々変わってゆく。
●崔洋一(日本)
大島渚監督や村川透監督などの助監督を経て、『十階のモスキート』(1983)で監督デビュー。以後、『いつか誰かが殺される』(1984)、『友よ、静かに瞑れ』(1985)、『Aサインデイズ』(1989)、『月はどっちに出ている』(1993)、『平成無責任一家 東京デラックス』(1995)、『犬、走る DOG RACE』(1999)を発表。1996年には韓国の延世大学語学堂に留学。韓国の近代映画史の研究をしながら多くの韓国映画人と交流を図る。近年も『刑務所の中』(2002)、『クイール』(2004)、『血と骨』(2005)など話題作を発表し続けている。
- 上映作品:
月はどっちにでている
- 日本/1993/日本語/カラー/35mm/109分
在日コリアンのタクシードライバー忠男の周囲では悲劇とも喜劇ともつかない事件が毎日のように起きている。忠男はふとしたことで知り合った生意気なフィリピーナを口説き落とすが、その恋もまた迷走する。鮮烈な映像世界で常に日本映画界を揺さぶり続ける在日二世の監督崔洋一が初めて自ら在日を取り上げ、それまでの在日のイメージを覆して、1993年度の日本映画界に大旋風を巻き起こした傑作。
●呉乙峰(ウー・イフォン)(台湾)
台湾のドキュメンタリー製作者であり社会活動家、現在の台湾の公共メディア運動の先駆者。1988年にドキュメンタリー映画製作集団全景映像工作室を設立。代表作にYIDFF '91で上映された『月の子供たち』(1990)、YIDFF '97で上映された『陳才根と隣人たち』(1997)など。また、YIDFF '99の「全景&『CINEMA塾』、映画運動の試み」にも参加。『生命(いのち)』はYIDFF 2003のインターナショナル・コンペティションで上映され優秀賞を受賞した。
- 上映作品:
生命(いのち) ― 希望の贈り物
- 台湾/2003/北京語、台湾語/ビデオ/148分
1999年9月21日に起きた台湾大震災。震源地近くにあった集落は大震災によってあとかたもなく土砂にうずもれてしまった。そこからあてどもなく親族の遺体を探す4組7名の家族たち。被災者家族にとってつらくのしかかってくるのはむしろ震災以降の日々だった。監督は喪失感にとらわれる家族たちが再生に向かう姿を、信頼関係を丹念に築きながら暖かく見守る。この作品は今回上映する全景の「大歩向前走(前を向いて大きく歩こう)」シリーズの第1本目の作品となった。
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